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文字数 872文字


「弱点って、何処ですか?」

早坂さんが一瞬、ぎょっとわたしを見たのは、思ったより近くにいたからだろう。

「頭部よ。雪音ちゃん、もっと下がって」

「頭部って、あの触覚みたいなのが生えてるあたり?」

「そうだけど・・・変な事考えちゃダメよ」

「どうやってあそこまで・・・」胴体が起き上がってる状態では到底頭には届かない。高さで言ったら、5メートルもありそうだ。

「そこが問題ね。奴の体を登って行くか、這って移動するところを仕留めるか」

「登る!?」考えただけでゾッとする。

大ムカデは、胴体を上下に揺らしながらこちらを伺っている。

「襲って来ないところを見ると、警戒心が強いな。一か八かやってみるか」そう言うと、瀬野さんが動いた。ダッシュで大ムカデの後ろに回り込む。大ムカデはすぐに動かなかったが、瀬野さんが近づくのを待って、尻尾を薙ぎ払った。瀬野さんはナイフの先端を盾にし、吹き飛ばされた。

「瀬野さん!」

地面を転がり落ちるが、すぐに体勢を立て直す。「大丈夫だ」

──すごい。普通の人だったら、大怪我をしてもおかしくないのに。鍛えた身体もそうだが、受け身の取り方を知っているんだ。

「怯ませようにも、胴体は硬くて刀が刺さらんな。一気に頭を狙うしかない」

「あそこまで行くのは無理そうね。頭を下げさせるにはどうすればいいかしら」この状況でも冷静に考えられるのは、経験値なんだろうか。早坂さんの表情はいつもと変わらない。

「誰かが囮になって追いかけさせるか?移動する時は頭も下がるだろ」

「そんなに上手く行くかしら。この図体とスピードを考えたら、すぐに追いつかれて後ろからやられるのがオチよ」

確かに。さっきの林の中での動きを考えると、かなりの速さだ。

「向こうから、攻撃させるしかないんじゃないですか。正面から向かっていけば、さっきみたいに頭を振り下ろすかも」

「・・・それ以外に方法はなさそうね。避けられる保証はないけど。雪音ちゃん、そのままもう少し下がりなさい」

「はい」下がりながら、バッグからナイフを取り出す。それを見た早坂さんが何も言わないのは、それほど危険ということなのか。



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