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文字数 859文字


遠目で見るとのは違い、それは早坂さんが言っていた通り、火その物だった。紅く燃える火の玉が空中を浮遊している。

「気持ち、暑くなってない?」

「ああ、辺りの温度が上昇してるな」

姿こそ小さいが、アレから発してる熱は強力という事か。

「近づけなきゃナイフで刺せませんよね。そもそも、アレに刺せるのかな・・・」

「財前さんの情報によると、鬼火の中には本体があるらしい。そいつが上手く出てきてくれればいいんだが」

「本体?って、どんなだろ」

「球体のような物って言ってたわね。問題はそれをどう見つける、か」

「水をかけるとか?」

「・・・焚き火じゃないんだぞ、ただの水をかけて効くと思うか?消防のポンプ車でも引っ張ってくれば話は別かもしれんがな」

「まあ、そうですよね・・・」


──ほんの、一瞬だった。
視界がオレンジ色に染まり、目を開けていられないほどの熱さに襲われる。
早坂さんはわたしを抱えたままそこから飛び退いた。瀬野さんも同様、地面に手をつきバランスを取りながら振り返る。

さっきまでランプの灯りのように控えめに燃えていた火の玉が、何十倍にも大きくなっている。ゴオオオオという音と共に激しく炎が燃え盛る。

「あっつ・・・サウナにいるみたいね」

「そんな悠長な事をっ!」

早坂さんはわたしを下ろし、自分の後ろに移動させた。

「いいか、油断するなよ。目を離すな」

そうしたくても、熱さで思うように目が開けられない。

「ゴーグルも必要だったわね」

激しく燃える炎が、一瞬、穏やかになった。そして、うねるようにゆらっと動き、止まった。

──来る。

直感と同時に、わたし達を目掛けて突撃してくる炎。自分で動くより先に、わたしは地面に倒れていた。その上には、わたしを覆うように早坂さん。

「瀬野!生きてる!?」

「・・・チッ!俺は大丈夫だ」

瀬野さんは反対方向に回避したようだ。
早坂さんのパーカーのフードが少し燃えているのに気づいた。

「早坂さん!大丈夫ですか!?」

「大丈夫よ」

次の攻撃に備えて立ち上がり、身構える。早坂さんはまた、わたしの前に立った。
わたしは早坂さんの腕を掴んだ。





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