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文字数 1,085文字


「それで、その公園には行ってきたんですか?」

「ええ、ずいぶん前にね。やっぱりそこに居たわ。でも、わたしに気づいてまた姿を見せなくなったわ。そんなに近づいたつもりはないんだけど、よほど警戒心が強いみたいね」

「ずいぶん前にって、空舞さんいつ戻ってきたんですか?」

「ここに来たのは8時くらいよ。なぜ聞くの?」

という事は、戻ってきてからわたしを起こさずに待っていてくれたのか。最終的には起こされたけど、いつもの空舞さんなら時間構わず起こしてくるのに。そんなちょっとした事が、嬉しく思う。

「特に意味はないです。空舞さん、子供って言ってましたよね」

「ええ、子供よ。遠目で見る限りは」

子供の、妖怪?思い浮かぶのは、あの化け猫くらいだ。

「その公園の名前とかわかります?」

「それも調べてきたわ。光林(みつばやし)公園という名前よ」

さっそく携帯の地図アプリで調べる。ヒットしたのは一件だけ。ここから約5キロ離れた場所にあるようだ。普段なら徒歩で行ける距離だが、この足ではさすがに厳しい。

「遊里と正輝には言わないの?」

「あー、言うのは言うんですけど・・・」

昨日の事があるし、さすがにこのタイミングでは言いづらい。2人だって相当疲れているだろうし。1人では動くなと言われているけど、見に行くだけなら大丈夫だろう。
こうなったらタクシーを使うか。しかし、わたしの移動手段にタクシーという選択肢は存在しない。何故なら、お金がかかるから。

「何を考えているの?」

「え?あ、タクシーで行こうか迷ってるんです」

「1人で?」

「はい。とりあえず見に行って、それから報告しようかなと。2人には」

「なぜ?」

「・・・昨日の今日だし、煩わせたくないんです」

「それはあなたも一緒じゃない。足も怪我しているのよ」

「まあ、そうなんですけど・・・だからタクシーで行こうかなと」

「だったらそうすればいいじゃない」

「いや、そうなんですけどぉ・・・」

空舞さんは首を傾げた。

「何か問題があるの?」

「・・・お金?タクシーは高いんです」

「ああ、そーゆうこと。あなた貧乏なのね」

「うっ」否定出来ないのが、悔しい。

「確かに、こんな家に住んでいるものね」

ここまでストレートに言われると腹も立たないが、しっかりとダメージは受けた。

「いんですぅ!わたしは気に入ってるから!」

「その公園の近くに地下鉄の駅があったわよ」

「えっ!・・・そーゆう事は早く言ってもらえると助かります」

再度地図を確認すると、本当だ、公園の目の前に地下鉄の表記がある。それに、家の近くの地下鉄と同じ路線。ここから駅までは3分、降りてからは1分と言ったところか。これならイケそうだ。
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