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文字数 891文字


「・・・あい」

「あっ、そうそう、忘れるとこだったわ」

そう言うと、早坂さんは後部席のドアを開けて中から紙袋を取り出した。それをわたしに渡す。反射的に受け取ったが、ズッシリと重い。

「なんですかコレ?」

「今日の残りよ」

「えっ!・・・また頂いていいんですか?」

「そう思って多めに作っておいたの。冷凍も効くから、ゆっくり食べなさい」

「嬉しすぎる・・・」

「いい?お酒ばかり飲まないで、ちゃんと栄養のある物を食べなさい。睡眠も大事よ。若いからって油断してると後々出てくるんだから」

オカンモードが発動した。

「若くないですが、気をつけます」

早坂さんの手がわたしの頬に出来た吹き出物をチョンと小突いた。

「早く治るといいわね」

「ああ・・・まあそのうち、治ります」

「まあ、何が出来ようとあなたの可愛さは変わらないから大丈夫よ」

──こういうところが、たらしだと思うんだけどなぁ。

「顔にドデカいイボが出来ても、そう言えますか」

「ええ」 即答だ。

「顔中がホクロだらけになっても?」

「ええ」

わたしが懐疑の目を向けると、早坂さんはニコリと笑った。

「言ったでしょ、あなたは内面から滲み出る可愛さがあるの。イボが出来ようが巨漢になろうが可愛いわ」

あまりの清々しい言い様に、噴き出さずにはいられなかった。

「巨漢になったらなったで怒られそうですけどね、不摂生だって」

「大丈夫よ。その前にあたしが止めるから」

「お願いします」

「でも、あなたはもう少し太ったほうがいいわ」笑っていた早坂さんが真顔になった。「身体の線が細すぎるわ。そのうち骨が飛び出るわよ」

「・・・至って平均体重ですので、ご心配なさらず」

「嘘おっしゃい。あなた、内臓入ってないんじゃないかと思うくらい軽いわよ。言われた事ない?」

「・・・そもそも、自分の体重がわかられるような状態になった事がないので。誰かを除いて」

「まあ、そうね。そんな事はなくていいんだけど」──出た、"得意"の意味深発言。なくていいと思う、その理由(ワケ)は?そこが1番知りたいところなのですが。「ちょっと、再確認してもいい?」

早坂さんの手が伸びてきて、わたしは素早く後ろに引いた。

「帰ります」


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