p.3

文字数 858文字


「あー、ごめんなさい。わたし今日はちょっと、先約があって」

「何よ先約って。早坂さん?」

なぜ、すぐにその名前が出る。「あー、まあ・・・」

「え、この前迎えに来てた彼?雪音ちゃんデートなの?」

「違います」

「雪音さん、彼氏いるんすか?」

「違うって」

「えー、雪音さんと飲みに行きたかったな」

可愛い事言ってくれるじゃないか。「ゴメンね。今日はどうしても、外せない用で・・・」

「まあ、デートならしょうがないわね」

「だから違うって」

「天然記念物は置いて、3人で行きましょうか。今日は飲むわよー!」

「一真くんゴメンッ。今度改めて飲みに行こ」

「・・・2人でですか?」

「ん?まあ2人でもいいけど」

「了解っす。約束すよ」

──弟がいたら、こんな感じなんだろうか。なんにせよ、可愛い。お小遣いをあげたいくらいだ。



頼むから、まだ来てませんように。
そう願いながら店を出たが、すぐに、イカつい車が目に入ってきた。
それだけならまだしも、車の後方に、デカいシルエットが2つ。

「あれ?早坂さん?と、もう1人誰かいるわよ」

「そうだね。じゃあわたしはここで」1歩踏み出し、後ろに引き戻される。

「誰よ」締め付けられた右腕が、痛い。

「早坂さんのお友達。ということで、また明日」

「ほら、こっちに来るわよ」

「えっ」──・・・ NO!来なくていいんですけど!

「こんばんは。雪音ちゃん、お仕事お疲れ様」

デジャヴ感が否めない。「・・・お疲れ様です。早坂さん・・・と、こちら、早坂さんのお友達の瀬野さんです」

さっさと紹介して去ろうと思ったが、春香がわたしより1歩前に出る。
「初めまして、雪音の友達の春香ですう〜」
またもや、デジャヴだ。春香の営業スマイルの前でも仏頂面を崩さない瀬野さんが、軽く会釈する。

「ごめんなさいねえ、この人、生まれつき愛想を持ち合わせてないのよ」

「いいんですよ。愛想がない男ほど、感情を露わにした時、燃え(萌え)ますから」

引き気味で、恐ろしいモノでも見るかのように春香を見る瀬野さんが、面白すぎる。
「・・・行くぞ」瀬野さんは足早にその場から居なくなった。







ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み