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文字数 696文字

着替えを終えたわたし達は、店の外で二手に分かれた。
直前まで春香に粘られたが、わたしの意思は固かった。最後の舌打ちは、水に流した。

携帯の時計を確認すると、23時31分。
家までは歩いて20分弱。地下鉄という選択肢もあるが、金曜日のこの時間帯は飲み帰りの客でいっぱいだ。
これ以上、足を駆使したくなかったけど・・・しゃーない、歩くか。


6月に入ったばかりだが、今日はとても蒸し暑かった。少し歩いただけで、額にじんわりと汗が滲む。

あー、今ビール飲んだら最高だろうな。と、少し後悔。まあわたしの場合、一杯飲んだら満足するんだけど。
あの2人はそうはいかない。控えめに言って酒豪だ。最初のビールなんて、まるで水を飲むかのように一瞬で飲み干すんだから。
わたしが1杯飲み終わるのと、向こうが3杯飲み終わるのが同じタイミングって、どういうことだ。

そう、だから深夜コースは確定なわけで ——それによって、わたしには懸念が生じる。

経験上、"奴ら"は深夜に活動が活発になるからだ。昼に見かけることもあるが、大概は辺りが暗くなってからだ。

出来るだけ見たくないから、わたしはいつも下を向いて歩いている(そのおかげで小銭を拾った事も多々)。


だけど今日は、そんな自分を恨んだ。


家まであと5分というところで、不覚にも思い出してしまったのだ。冷蔵庫に、飲み物が無いということを。水道水か・・・いやここは妥協するまい。
少し戻れば、コンビニがある。ビールも欲しかったし。と、引き返す。

そして、ペットボトルの水とビール、余計なアイスまで購入したわたしはコンビニの自動ドアを抜けた。

そして次の瞬間 —— 持っていた袋を地面に落としてしまった。
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