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文字数 958文字


イライラしながらメールを開いて、足が止まった。
画面を消し、携帯をポケットに戻す。
少し歩いて、また止まる。
再度携帯を取り出し、メールを開いた。

【こんにちは。未来です。覚えていますか?】

これまで知り合った中で、未来という名前の人物がいるか思い出す。考えるほど、知り合いがいないという事実は置いといて、──"あの"、未来ちゃんだよね。

え、なんで?周平の言ってた人って、未来ちゃんだったの?でも、周平と未来ちゃんに面識はないはず。
あの事件があってから、未来ちゃんとは、ほとんど口を利かないまま学校生活を過ごした。そして、4年生になる手前で、未来ちゃんは親の海外赴任に伴い転校することになった。

当たり前だが、それ以来、会った事はない。
なんで?今このタイミングで、わたしに連絡が?
周平のメールを読み返す。【人伝てだから俺も知らねーんだわ】

頭が混乱してきた。とりあえず、何か返信せねば。
【こんにちは。覚えています】──その後に続く言葉がない。元気ですか?と打って、すぐに消す。
久しぶりに連絡を取り合う友達でもあるまいし。──そう、友達では、ないから。

【こんにちは。覚えています。お久しぶりです】
堅いか?いや、でも馴れ馴れしいよりはね。そのまま送信ボタンを押す。

3分後、返信が来た。
【返信ありがとう。突然でごめんなさい。雪音ちゃんに会って話した事があります。無理なら、電話でもいいのですが。如何でしょうか】

わたしに、話したい事。なんだろう。今度は、動悸がしてきた。

その後のやり取りで、未来ちゃんは此処から電車で30分程の所に住んでいる事がわかった。
専業主婦をしていて、時間に融通が利くから是非、会って話がしたいと。わたしに合わせると。
正直、迷った。あの時の事は、10年以上経った今でも、わたしの中に苦い記憶として鮮明に残っている。出来れば、会いたくはない。
でも、断っても、気になってしょうがない。そうなる自分が見えている。
結局、会うという選択肢以外はないわけだ。

驚いたのは、その日を明日に指定してきた事だ。休みを聞かれ、月曜日だとは言ったが、確かに明日は月曜日だが、今日の明日で?
いやしかし、考えようによっては、下手に先延ばしするより、すぐに"決着"がつくのでは?

結果、明日の正午、早坂さん達と行ったあの喫茶店で落ち合う事になった。











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