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文字数 832文字


男性は事ある度に女性の頭に触れるし、女性は会話をしながら何度も男性にボディタッチしている。さすがに会話までは聞き取れないが、どこからどう見ても──「デキてるわね」

「わたしもそう思う」

「えー、マジすか。上司と部下とかじゃ?」

「だったらただのセクハラじゃない。女のほうもまんざらでもない感じだし、違うわよ」

「2人とも私服だしね。会社帰りってわけじゃなさそう」

「実はマジで本当の親子だったりとか?メッチャ仲良い親子いますよね」

「・・・それはそれで気持ち悪いんだけど。あの雰囲気と距離感は親子じゃないわ、絶対」

「あ、そういえば近く通った時、女の人が敬語使ってるの聞こえたから、親子ではないと思う」

「そーゆう事は早く言いなさいよ。うーむ・・・不倫か?」

「えー、あんな歳離れてるのに?ありえなくないすか」

「今時、親子ほど歳の離れてるカップルなんてなんぼでもいるわよ。あたしは理解出来ないけど」

「俺もっす」

「ていうか、普通に恋人同士なんじゃ・・・」

「いいや、何か匂うのよねえ・・・」

「不倫だったら、公衆の面前であんなに堂々としてるかね」

「確かに、そうすね」

「うーん・・・離婚調停中とか?」

「一真くん、ひねくれすぎだと思わない?」

「ハハッ。でも、春香さんのこーゆう勘、鋭そうすよね」


それから間も無くして、男性からチェックの指示を受けた。わたしが担当したが、ビール、サワー、カクテルの他にワインを1本空けている。女性は明らかに酔っている様子だった。


「やっぱり、不倫か・・・」

店を出た2人の後ろ姿を眺めながら、春香が呟いた。

「まだ言うか」

「だって、あの距離感見なさいよ。腕と腕くっついてるじゃない」

「だから、付き合ってるんでしょ」

「付き合ってるなら腕くらい組むでしょ。彼女フラフラなのよ。それをしないって事は・・・」

「不倫すか?」気づいたら、一真くんも後ろにいた。

「え、なに、誰か不倫してるの?」次に、タバコを咥えた店長が厨房からのそのそとやって来た。もうオフに切り替わっている顔だ。







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