p.17

文字数 859文字


「離れなさい!」

空舞さんが叫んだ次の瞬間、正面から凄まじい風に襲われた。

「うわっ!」咄嗟に身を低くしたが、危うく後ろに倒れそうになった。
風は一瞬だったが、土埃が舞い、視界を遮る。前が見えない。

「早坂さん!瀬野さん!」

「ここよ」

ぎょっとした。さっきまで前にいた2人が、わたしの両隣に仰向けに倒れていた。

「ちょっ、大丈夫ですか!?」2人を交互に見る。2人とも大の字になり動かないが、見たところ怪我はなさそうだ。

「見事に飛んだわね。空舞ちゃんの気持ちがわかった気がするわ」

瀬野さんがむくりと上半身を起こす。「んな事言ってる場合か。なんつー風圧だ、ありゃあむやみに近づけんぞ」

「厄介な羽ね。しかも、見た感じかなり硬いわ。ナイフが刺さるとは思えないわね」

早坂さんは仰向けになったまま、起き上がらない。「早坂さん、どこか怪我したんですか?立てますか?」

「立てないわ。雪音ちゃん起こして」

「えっ!」

慌てて早坂さんの腕を掴み起こそうとすると、早坂さんは脚の力だけでスッと立ち上がった。
全然大丈夫じゃねーか。

早坂さんが頭を振って髪についた土を落とす。「さて、どうしたものかし・・・ゴホッ」

「早坂さん?」

「オエッ・・・ゴホゴホ」今度は瀬野さんだ。

「あの粉を吸ったのね」空舞さんが冷静に言った。

「咄嗟に顔は覆ったんだがな。さすがに防ぎきれん」

「あ"ー、気持ちわる。まあ、これくらいは大丈夫よ。雪音ちゃんは何ともない?」

「わたしは大丈夫ですけど・・・」

「それ以上吸ったら、どうなるかわからないわよ。あなた達は近づかないほうがいいわ」

「でも、じゃあどうやって・・・」

「わたしがやるわ」

「・・・えっ!」

「そのナイフを頭に刺せばいいんでしょ?わたしが1番適任じゃない」

「・・・確かに、そうね。じゃあ、空舞ちゃんに任せるわ」

「任せるって、そんな簡単に・・・」

「平気よ。ナイフを貸してちょうだい」

「中条、お前のをやれ。俺たちのはデカいから扱いづらいだろう」

「あ、はい・・・」ボディバッグから取り出し、ナイフを開く。柄のほうを空舞さんに向けて差し出した。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み