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文字数 934文字


15分程、雑誌を読むフリをしながら外の男をの様子を伺っていた。一向に動く気配はない。
チラチラとこちらを気にしている。
何が、目的なんだろう。家まで着いて来て、部屋に入ったところで襲ってくる気か──。
早坂さんの、セキュリティ的に大丈夫?という言葉を思い出した。全然、大丈夫じゃありません。初めて、オートロックを羨ましく思った。

60歳からの生き方を棚に戻し、その隣の高血圧の食事を手に取った時、窓の外に車のライトが見えた。そして次の瞬間には、ブレーキ音を立てて、駐車場に荒く止まる。

目の前が駐車場だから、すぐにわかった。一瞬、ガラス越しに目が合う。
早坂さんはすぐに車から降り、その足で男の元へと向かった。

「えっ・・・ちょっ・・・」わたしもすぐに追いかける。

自動ドアが開いた時、早坂さんはもう男に近づいていた。男が、逃げようとする。その後ろ襟を、早坂さんが掴んだ。

「早坂さん!」

早坂さんは男を掴んだまま、わたしを見た。「・・・外に出ないでって言ったでしょ」顔は厳しいが、声は優しい。

「なんだお前は!離せ!」男は早坂さんの手を振り解こうとするが、ビクともしない。わたしと同じくらいの身長で、細身だ。

「さあて、どーゆうことか聞かせてもらおうかしらね」

「なっ、何がだ!」

「とぼけんじゃないわよ。この子の事つけてたでしょ」

「ちっ、違う!俺はっ・・・」男は帽子を深く被り、顔を伏せた。

「じゃあなんで逃げようとするのかしら」早坂さんが掴んでいた襟をグッと引き上げた。

「グッ・・・やめろっ、わかった!逃げないから・・・離してくれ!」

早坂さんが手を離すと、男はバランスを崩してよろついた。一瞬、顔がこちらを向く。

「・・・あれ?あなた・・・」

男が慌てたように帽子を下げる。

「知ってる人?」

確かめたくても、帽子のツバが邪魔で顔がよく見えない。と思ったら、早坂さんが乱暴にそれを剥がした。

「あっ!」思わず指をさした。──やっぱり、そうだ。「おじさんの友達!」

「・・・だれ?」

「今日、お店に来たお客さんです。そうですよね?」

男は目を逸らしたまま、何も言わない。
間違いない、あのセクハラジジイのお友達だ。
おじさんの印象が強すぎて存在が薄かったが、あのおじさんの連れだからこそ、ハッキリと顔を覚えている。








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