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文字数 886文字


その時、身体にのしかかる重み。
攻撃を喰らったと思ったが、熱くない。

「瀬野ッ!!」

耳元で早坂さんの声がした。


その後は、何が起きたかわからなかった。

気づけば、わたしは早坂さんの身体に組み敷かれていた。

「え・・・なんで・・・」

「ギリギリだったな」

声がするほうを見ると、瀬野さんが地面に膝をついていた。さっきあの塊が落ちた場所だ。手にはナイフを持っている。

「鬼火はっ・・・」

「大丈夫、もういないわ」

目の前に早坂さんの顔があった。早坂さんはわたしの額に唇を押し付け──わたしを抱くようにして上体を起こした。

「怪我は?」

全身が痛いが、今はそんな事どうでもいい。

「大丈夫です」

早坂さんはふうと息を吐き、わたしを抱き寄せた。痛いくらい強く抱きしめられ、息がしづらい。でも、それ以上に押し寄せる安堵。わたしは早坂さんの身体に腕をまわした。

「よかった・・・てっきり・・・」声が震える。

「てっきり?」わたしを抱きしめたまま早坂さんが言った。

「てっきり・・・」その後は口にしたくない。「ていうか、何があったんですか!?戻ったら2人ともいなくて・・・」

「吹き飛ばされたわ」

「吹き飛ッ・・・」

「咄嗟に木に隠れたんだけど、木もろとも吹き飛ばされちゃった」

「ちゃったって・・・怪我は!?」

「打撲程度よ、瀬野も大丈夫」

──打撲程度で済むか?普通。
ふと、早坂さんの背中に触れて気づいた。

「早坂さん、服が・・・」

早坂さんは身体を離し、自分を確認した。所々、パーカーが燃えている。

「ま、上だけで良かったわ」

「火傷は!?」

「少しね。大丈夫よ」

──少しで済むか?普通。
そんなに簡単に燃えないと言うのは、嘘じゃなかったらしい。

「それより、あなたねぇ」早坂さんはわたしの肩をグッと掴んだ。

あ、ヤベ。

「いったい何考えてるのよ!刀を持ってこいとは頼んだけど、斬りかかれなんて言ってないわよ!」

「・・・だって、2人がいなかったし・・・」

「だからってどうしてそんな発想になるわけ?自分から向かおうとするなんて無茶すぎるわ!」

「いや、自分からは向かってないです」

「揚げ足を取・ら・な・い・の」早坂さんが悪魔に見えた。

「スミマセン」
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