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文字数 848文字


只今20時30分─。
イタリアン酒場TATSUは、本日も大盛況である。

「雪音!2番テーブルに生4つお願い!」

「あいさー!」

「パスタ上がったよ〜」

「俺行きまーす!」

「あっ、雪音!それ終わったら山本さんのチェックよろしく!」

「あいー!」

山本さんとは、店の常連客である。週に1度、仕事終わりに来店し、カウンターでピザとビールを注文するがお決まりだ。メニューには無い山本スペシャルというピザも存在するほど、ピザをこよなく愛するおじさまなのだ。寡黙な人であまり会話はないが、忙しい時は店の状況を見て注文してくれるから、わたし達従業員は非常に助かっている。

「雪音さん、俺ビールやるんでチェック行ってください」

「あ、ありがとう一真くん」


伝票を持って行くと、山本さんが微かに笑っていた。「いつもありがとうございます。どうしたんですか?」笑いがわたしにも移る。

「いや、男手あると違うね。今まで2人で大変そうだったもんね」

「そうなんですよ。もうだいぶ助かってます」

「見送らなくていいから。頑張ってね」

「ありがとうございまっす!」

「雪音!3番テーブルにハイボール2と赤2!あとお冷4!」

「俺やります!雪音さん、カウンターの片付け願いします」

「・・・うっす!」

一真くんは、力仕事を率先してやってくれる。ありがたいけど、気が利きすぎて逆に申し訳ない気持ちになる。俺の事はバンバン使ってくださいと言うが、その前に自分から動くから何も言う事がない。

営業終了後も、疲れた顔ひとつせず手際良く片付けをこなし、気づけば綺麗になっている。
とにかく、一真くんが居る日は全てが時短で終わるということだ。


「毎日入ってくれればいいのに」洗い物をしたがら、春香が囁いた。視線の先には、テーブルを拭きながら店長と談笑する一真くん。

「激しく同感だけど、本業は学生だしね」わたしは隣で拭き係に専念する。

「惜しい・・・惜しすぎる・・・学生じゃなかったらっ・・・」

「なんの話だ」

「顔良し、性格良し、身長良し、全てが揃ってるのに・・・」

「なんで学生かって?」






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