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文字数 882文字


早坂さんはクスクス笑っているが、わたしはモヤモヤしてしょうがない。自分はわたしが言うまで止めないくせに。ここで粘れる自分になりたい。

「わざわざ送ってくれてありがとうございました。気をつけて帰ってくださいね」

「ええ、あなたもゆっくり休んで。また連絡するわ」


部屋に入り、首にかけているタオルに気づく。
また、持って来ちゃった。というか、そんなに濡れてないんだけど。あの人も、大概過保護だよな。今更だけど。

カーテンから外を覗くと、早坂さんの車はもう無かった。激しい雨で景色がボヤけて見える。あの視界でよく運転出来るなと、感心する。無事に帰ってくれればいいけど。

シャワーを浴びた後、そろそろかなとメールする。【無事、着きましたか?】

早坂さんからの返信は基本、1分以内だ。
【着いたわよ。ありがとう♡おやすみなさい♡】

ハートね。これも基本だな。そんな事を思いながら文字を打っていると、無意識に語尾にハートが付いていた。あぶなっ!慌てて消す。
ハートの代わりに星をつけて、おやすみなさいと返信した。

ソファーに仰向けに横になる。背もたれにかけていた早坂さんのタオルが目に入り、顔に被せた。
早坂さんの匂い──というより、早坂さんの車の匂いがする。

落ち着く。


"雪音ちゃん"

早坂さんはあの後、何を言おうとしたんだろう。少し虚ろな感じで、わたしを見つめていた。なんとなくだけど、本人も何を言っていいのかわからないような、そんな様に感じた。

人の考えてる事がわかるマシーンとか、発明されればいいのに。そしたら全財産を叩いても買う。
──・・・買えないか。







「あれは独占欲すね」

翌日の、一真くんとの会話だ。

「それって、お父さん的目線でしょ」

「はい?雪音さん、マジで言ってます?」

「いつもそうだもん。過保護モードに入るから」

「んなわけないでしょ、あの歳で。俺に嫉妬してるのバリバリ伝わってきましたよ」

「・・・しっとぉ・・・?」

「・・・マジで鈍感すね。どう見たって雪音さんの事好きでしょ」


その日のわたしは、ミスの連発で春香に何度も怒られ、一真くんにはいつも以上にフォローしてもらい、最終的に知恵熱が出た。


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