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文字数 959文字


わたしの起きてからのルーティンは、決まっている。

目が覚めたらまず、コップ1杯の水を飲み、顔を洗う間に、ケトルでお湯を沸かす。
コーヒーを淹れて、ソファーに座り、テレビをつける。その時間によってテレビの内容は違うが、基本、選ぶのはワイドショー。
社会問題や芸能、スポーツ界のニュースをボーっと流し観している。興味を惹かれるものがない場合は(基本毎日)、テレビを流しながら携帯のゲームに切り替える。
ライフが無くなるまで遊んだら、朝昼兼用のご飯タイムだ。メニューは1択、パンだ。
冷凍ストックの食パンをトースターで2枚焼き、バターを塗って食べる。その時間が何よりの至福だ。


だからこそ、その冷凍ストックを忘れた時のダメージは計り知れない。
わたしは冷凍庫を開けたまま、項垂れた。
そうだ、昨日買わなければならなかったのに、財前さん宅訪問でそれどころではなかった。

冷蔵庫の中には、水とビールと酎ハイ。そしてカマンベールチーズ。前に春香が家に来た時、冷蔵庫の中を見て、一人暮らしの男みたいねと言われたのを思い出す。

さて、どうしたものか。今を逃せば、次に食事にありつけるのは出勤後の賄い飯。ざっと考えて、8時間後だ。かと言って買い物に出るのも面倒だし。それまでチーズで凌ぐか。あーだこーだと考えていると、携帯が鳴った。

店長からだ。【おはよう。うちのマザーがギックリやっちゃって。申し訳ないけど今日は臨時休業にします。また連絡するね】

「あらら・・・」

大丈夫だろうか。店長のお母さんは1人で暮らしていると、前に聞いたことがある。店長には妹が2人いるが、離れた場所に嫁ぎ、近くには店長しかいないとか。

【了解です。お大事に】と返信する。

──ということは、是が非でも買い物に行かねばならなくなった。
家着から近所用の服(Tシャツとスウェット)に着替え、家を出た。

近所のスーパーまでは、徒歩10分。今日はカラッとした青空で湿度も低く、過ごしやすい気候だ。少し遠回りになるが、散歩がてら河川敷を回って行くことにする。

ここは、わたしが今の家に引っ越す決め手となった場所だ。河川敷の遊歩道は、昼夜問わず多くの人が行き交う。ランニングをする人、犬の散歩をする人、川の流れを眺めながらベンチでおにぎりを食べる老夫婦。そんな有りふれた景色が、わたしの癒しとなっている。






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