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文字数 829文字
ベンチに腰掛け、水で喉を潤す。二日酔いじゃなければ、ビールでも良かったな。今日は人がいないから、周りの目を気にせず飲めた。
ボディバッグから携帯を取り出し、着信をチェックする。
春香から返信が来ていた。
【半分死んでる。さすがに今日は飲まないつもり。アンタは?】
つもり?飲む可能性もあるということか。【久しぶりの二日酔い。さすがに今日は絶対飲めない】と返す。
そういえば、早坂さんから電話あったんだ。慌てて切って失礼な事しちゃったな。履歴から、早坂さんの名前を押す。
「もしもし?」
── 今、コール鳴ったか?「もしもし、早坂さん?」
「ん?何かしら、もしもーし、雪音ちゃん?」
「もしもし?聞こえませんか?」
「あ、聞こえたわ。なんか雑音が入るわね」
「あ・・・風の音だと思います」マイク部分に手を当て、風を防ぐ。
「外にいるの?」
「はい」
「どこ?」
どこって──「家の近くの河原です」
「なんで?」
──尋問か?「人と会ってて、その帰りです。さっきはすみませんでした。慌てて電話切っちゃって」
「待ち合わせに遅れるとか言ってたものね。大丈夫だったの?」
「はい、ギリギリ1分前でしたけど」
「そう。誰と?」
──尋問だ。「誰とって、友達ですよ」
「この前の子じゃないの?今日からバイトに入ったって言ってた」
「あー、一真くんのことですか?違います、昔の友人です」そこまで聞く意味、あるのか?
「そっか」
そっか、って──。「それで、電話、なんでした?」
「やあねえ、用がなければしちゃいけないの?」
「・・・いや、そうじゃないですが・・・」
「久しく会ってないから、元気かなあと思って」
「・・・久しくって、1週間も経ってないですけどね」
「あら、そうだっけ?もっと経ってるような気がするわ」
それに関しては同感だったけど、あえて言わない。「元気ですよ。早坂さんは元気ですか?」
「ぼちぼちね。じゃああとは宜しくね」
「えっ?」
「あ、ごめんごめん、こっちの話よ」
誰かといるんだろうか?後ろで微かに話し声が聞こえる。