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文字数 851文字


オープンから3時間後 ─。
常連のお客さんを見送ったわたしは、厨房の冷蔵庫からエナジードリンクを取り出し、息をつかずに飲み干した。
"この1本があなたを動かす"パッケージの言葉に惹かれて、2本購入した。

「動かしてくれ・・・」動き回ったせいか、頭痛が悪化している。

「春香ちゃん、雪音ちゃんが缶と会話し出した」

「雪音、ピーク過ぎたし、ちょっと座って休んでて」

「いや、だいじょーぶ。1回座ると立ち上がる時めまいするから、動いてたほういい」そうじゃなくても、今日は春香に助けられてばかりだ。

「アンタそれ重症じゃない」

「おーい、お姉さーん!おしぼりちょうだーい」

──そして、ここにも頭痛の種が。聞き慣れた声とセリフに、わたしと春香はうんざりと目を合わせた。

「はいはい、こぼしたのね。あたし行ってくるわ」

「ヨロシク」

毎週土曜日に現れる、セクハラじじいだ。今日は開店と同時にやって来て、いつものお友達らしき人物と、いつものようにワインのボトルを開けている。
春香が全部対応してくれているが、今日はやけに視線を感じような──。

「気のせいじゃないわよ。アンタのことずっと見てる。あたししか席に行かないから不満なんでしょ」

「ずっとって・・・」寒気がした。「今日も寝るよね、たぶん」

「寝てくれたほうが助かるわ。そしてラストオーダー過ぎたら、起こして帰らすわよ」

案の定、いつの間にかおじさんはテーブルに突っ伏していた。そしていつも通り、お友達はおじさんを置いて店を出る。
普通、寝ている友人を置いて帰るか?春香いわく、寝るのをわかっててタダ酒を飲みに来てるとか。

10時半のラストオーダーを迎えた時、店内にはおじさんしか残っていなかった。あえて時間が経過するのを待ち、春香が声をかけた。
いつものようにあと1杯だけが始まったが、もう10分前にラストオーダーは終わっていますと、今日も完璧な笑顔で神対応。

わたしは他のテーブルを片付けながらその様子を見守っていた。しぶしぶと会計を済ませ、春香がほぼ強引に出口まで連れて行く。これも毎度の事だ。




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