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文字数 866文字


今また戻っても、すぐいなくなるだろう。不意をついて、襲ってくる気か。
どうすればいい?── 追いかけて駄目なら、追いかけさせればいい。姿さえ見えれば、対処法はあるはずだ。

今の状況で、"奴"が見えるのはわたしだけ。
追いかけさせるには、どうすればいい。
わたしが走って逃げれば、早坂さんは確実に追ってくる。そして瀬野さんは、早坂さんを追う。
──そんなに、うまく行くだろうか。奴が追ってくる確信もない。

迷った時は、本能に従え、だ。
ごめんなさい。心の中で謝罪し、広場へ向かって、スタートを切った。

「えっ、雪音ちゃん!?」早坂さんがすぐに、続く。

「おいっ!」後ろで2人の足音を確認し、安心した。

柵をハードル選手のように飛び越え、広場の中心でブレーキをかけた。後ろを振り返る。
予想より近くに、早坂さん。そのすぐ後ろに瀬野さん。瀬野さんの後ろには、──何もいない。
出てこい、早く、姿を見せろ。

「雪音ちゃん!どうしたの!」早坂さんに肩を掴まれた。

「中条?」

──・・・やってしまった。2人の顔が見られない。

「ごめんなさい・・・」

「なにが?」早坂さんがわたしの顎を掴み、上を向かせる。

そのまま、口が開いていった。
なんだ・・・アレは・・・?
わたしの視線を追って、早坂さんが振り返る。

「瀬野っ!」

瀬野さんのすぐ後ろにいるソイツは、瀬野さん目掛けて頭を振り下ろした。瀬野さんは間一髪で避け、地面にスライディングする。

キシキシと音を立て、その馬鹿デカい胴体を浮かび上がらせる。多数の足が、わたしたちを挑発するかのように忙しなく動いている。

コイツは──・・・「ムカデ?」

「そんな可愛いもんじゃないけどね」早坂さんは、背中からナイフを取り出した。瀬野さんも、いつの間にか手にしている。

「雪音ちゃん、ゆっくり後ろに下がりなさい。出来るだけ遠くに行くのよ」

言われた通り、1歩、2歩と後退る。

「遊里、前に始末した大ムカデ覚えてるか?弱点は同じだろう」

「サイズ的に前の奴と同類にしていいのかしら。5倍はあるわよ」

「デカい分、動きも読みやすい。隙をついて仕留めるぞ」

「はいはい」








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