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文字数 816文字


「僕もその意見に賛成だ」そう言って笑う財前さんの目元に、少し"財前さん"の面影を感じた。

「そこで挙手は必要か?」と、冷静な瀬野さん。
早坂さんはニヤけながらずっと口元を押さえている。

「雪音ちゃん、変わったね」

「えっ、そうですか?・・・見た目が?」

財前さんは、フッと笑った。「いや。まあ、見た目という意味でも、変わったかな。前に会った時より、表情がハッキリしてるよ」

「・・・ハッキリ、ですか」

「ああ、迷いが消えた、という感じかな」

最初にここに来た時は、戸惑いの連続で、みんなの話についていくのがやっとだった。なんで自分がここにいるのかわからなかった。
自分がどう変わったのかはわからないけど、わたしは今、ここにいられる事が嬉しい。

「2人からこれまでの話は聞いてるよ。積極的に行動してくれているみたいだね」

「ああ、大した根性だ」

「無鉄砲とも言うけどね」

瀬野さんが、またかというように早坂さんを見た。

「2人の意見は、なかなか一致しないんだよ」と、財前さんが笑う。「きみの活躍に、遊里はあまりいい顔をしないからね」

「そんなことないわよ。度胸があるという点では認めてるわ」

なんとなく、言い方にトゲがあるのだが。

「身体能力もだろ」

心の中で、瀬野さんに親指を立てた。

「稀に見る身体能力だと聞いているが、雪音ちゃんは何かスポーツでもやっていたのかい?」

「いや、そこまでじゃないですけど・・・何もやってないです。運動神経が良いのは自覚してるんですけど、目指す物がなくて」

財前さんは、そうかと笑った。「雪音ちゃん、きみには感謝しているが、あまり無茶をしてはいけないよ。自分の身を守る、それを第一優先に考えてほしい」

隣からの突き刺さる視線が、痛い。「はい、わかってます」

「ホントに?」いや、痛い痛い。

「まあ、2人がいるからあまり心配はしていないが。それでも、自分の事は大事にしなさい。わかったね」

「・・・はい」

「ねえ、ホントにわかってる?」

「早坂さん、近い」




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