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文字数 872文字


「いや、わたしも行きたいんだけど、今日はちょっと・・・」

「早坂さんに連絡なら、向こうでも出来るじゃない。ちょっと抜けてもいいわよ」

「あー・・・」

「何よ、これから会う約束でもしてるわけ?」

「してません」というか、携帯の電源入れるのを忘れていた。

「じゃあ決定ね。待っててね〜ん、麦男くん」

「雪音さん、大丈夫すか?」

「あ、うん。行こっか」

「よっしゃ」一真くんは、小さくガッツポーズをした。

最近何かと断ってばかりだし、春香の言う通り
、感じ悪い女になりかけている気がする。
早坂さんには、春香が酔っ払って独演会に入った頃に連絡を入れてみよう。



?ラストオーダーを迎え、店内の掃除に取り掛かる。飲みに行くと決まった日の春香は、動く速さが2倍になる。それに加え、鼻歌だ。
わたしの事をわかりやすいと馬鹿にするが、お前も負けていないぞ。まあ、春香の場合、酒に限ってだが。

「チェックオーケーっす」

「よし、じゃあみんな出るよ〜」

4人で店を出て、わたしは思わず、その場で固まった。

「えっ・・・なんで」

見慣れた車と、こちらに向かってくる大きなシルエット。
早坂さんが、わたしの顔を見ながら近づいてくる。そして、わたしの前で足を止めた。

「こんばんは」

「・・・こ、んばんは」

と、春香がわたしの前にグイッと出た。「あらー!早坂さん、お久しぶりですぅ〜」

「お久しぶり。春香ちゃん・・・みなさんも」早坂さんが後ろの2人に微笑む。

店長は慌てたように頭を下げた。「ど、どうも、お久しぶりです」なんというか、綺麗な女性でも前にして照れているようだ。

「どうも」一真くんは、低い声で一言だけ。

「あの、早坂さん・・・」

「早坂さん、どうしてここに?雪音と約束ですか?」

わたしが何も言わなくても、話が済みそうだ。

「雪音ちゃんに話があるんだけど、借りてもいいかしら?」

「あっ・・・でもこれから・・・うおっ!」春香がわたしの背中を強く押し、早坂さんにぶつかりそうになった。

「どーぞどーぞ、持ってってください」

「おい・・・」

早坂さんはわたしの肩をガッチリと掴んだ。逃がさないというように。「そう、ありがとう」

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