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文字数 856文字


「振動よ」

「振動?なんの・・・」言いかけた瀬野さんが、辺りを見回す。「近くにいるってことか?」

「おそらく」

ブランコの向こう側は、柵で区切られた林。一瞬だが、その暗闇の中に動く物が見えた。
そこを、指さす。

「何か、います」

2人が同時にライトを消した。
早坂さんはわたしの腕を掴み、自分の背中に移動させた。
そのままゆっくりと進み、柵を越える。道という道はない。周囲を見回しながら、立ち並ぶ木を避けて奥へ進む。

「出来るだけ足音を立てるな」

暗闇に加え、地面は草だらけで足元がよく見えない。だから、そこにあった枝に気づくことが出来なかった。

バキッと、鈍い音が響く。3人ともピタリと静止した。
──わたしのアホゥ!言われたそばから!
そんなに大きな音ではないはずなのに、辺りが静かすぎるせいでこんなにも響く。

その時だった、決して遠くはない所から聞こえてくる──ガサガサと、地面を移動しているような音。一瞬止まって、また聞こえてくる。

早坂さんが、人差し指を口に当てた。
耳を澄ませる。音はするのに、方向が掴めない。まるで、この森全体から聞こえてくるようだ。

音でわからないなら、目視。ライトをつけられたら、視力を発揮できるのに。でも、暗闇にも目が慣れてきている。目を凝らし、注意深く、360度見渡す。
そして、木々の間に動く物体を捉えた。瀬野さんが向いている方向の、数メートル先だ。2人の背中に触れ、その方向を指で知らせる。

「何か見えたか?」瀬野さんが小声で呟き、頷いた。早坂さんがわたしの前に立ち、慎重に進んでいく。

おかしい。距離的に、もう見えてもおかしくないはず。──ここに居るのなら。
わたしはまた2人の背中に触れた。足を止め、周囲に意識を集中させる。

動いた!今度は、さっきまでわたし達がいた方向だ。戻ろうとして、早坂さんに腕を掴まれた。やはり、わたしを後ろにして来た道を戻る。

どうも、おかしい。確実に目で捉えているのに、なぜ、姿が見えない。移動しているから?
後ろを振り返り、そこに動く物を見て、確信した。

わたし達に、気づいているんだ。










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