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文字数 834文字
「まあ、これも何かの縁ね。空舞ちゃん、相談があるんだけど、聞いてくれるかしら?」
早坂さんはわたしの後ろの背もたれに手を回し、身を乗り出した。近い。
「相談?なに?」
「単刀直入に言うけど、あたし達はね、ある妖怪を捜しているの。といっても姿は人間よ。人間に化けてる。あなたは、それを見破れるわよね?」
「ええ。人間じゃないモノはすぐにわかるわ」
「とは言っても、何処にいるかもわからない。そいつは人間に紛れて生活してるの」
「何者なの?」
「本来の姿は、大蛇よ。人を喰らってその人間に化けるの」
「・・・そんな事が、あり得るの?」
「ええ、事実よ。あたしの知り合いがそいつの毒に侵されていてね。いずれ命を落とすわ。助けるには、そいつを始末するしかないの」
「お前は身軽だし、空を飛べて行動範囲も広い。同じ妖怪としてアイツの本性を見破れる。捜すにはうってつけなんだ」
「・・・例えばその大蛇を見つけたとして、どうやって殺すの?」
「それがあたし達の仕事よ」早坂さんは瀬野さんを見たが、わたしは見ない。
「そんなにうまく行くかしら」
「そうね、やってみない事にはわからないわ」
「死ぬかもしれないわよ」
「その時は・・・その時よ」
──そんなの、絶対に嫌だ。手にぎゅっと力が入る。
早坂さんがわたしの頭にポンと触れた。
「ということなんだけど、協力してくれるかしら?」
「・・・これも何かの縁、ね」空舞さんは早坂さんの言葉を復唱した。「わかった。協力するわ」
早坂さんはニコッと笑った。「ありがとう。心強いわ」
「空舞さん、ありがとう」
「そいつ以外の妖怪を見た場合も報告してくれ」
空舞さんは瀬野さんを見て、首を傾げた。「どーゆう事?」
「ちょっと、順を追って話しなさいよ。ごめんなさいねえ、この人生まれつきコミュニケーション障害なの」
「順を追って話してるだろう。さっき話しはついたはずだ」
「こっちはお願いしてる身なんだから、言い方ってものがあるでしょう」
「だからお願いしただろ。してくれって」
「威圧的なのよ。声も顔も」