p.5

文字数 834文字


「まあ、これも何かの縁ね。空舞ちゃん、相談があるんだけど、聞いてくれるかしら?」

早坂さんはわたしの後ろの背もたれに手を回し、身を乗り出した。近い。

「相談?なに?」

「単刀直入に言うけど、あたし達はね、ある妖怪を捜しているの。といっても姿は人間よ。人間に化けてる。あなたは、それを見破れるわよね?」

「ええ。人間じゃないモノはすぐにわかるわ」

「とは言っても、何処にいるかもわからない。そいつは人間に紛れて生活してるの」

「何者なの?」

「本来の姿は、大蛇よ。人を喰らってその人間に化けるの」

「・・・そんな事が、あり得るの?」

「ええ、事実よ。あたしの知り合いがそいつの毒に侵されていてね。いずれ命を落とすわ。助けるには、そいつを始末するしかないの」

「お前は身軽だし、空を飛べて行動範囲も広い。同じ妖怪としてアイツの本性を見破れる。捜すにはうってつけなんだ」

「・・・例えばその大蛇を見つけたとして、どうやって殺すの?」

「それがあたし達の仕事よ」早坂さんは瀬野さんを見たが、わたしは見ない。

「そんなにうまく行くかしら」

「そうね、やってみない事にはわからないわ」

「死ぬかもしれないわよ」

「その時は・・・その時よ」

──そんなの、絶対に嫌だ。手にぎゅっと力が入る。
早坂さんがわたしの頭にポンと触れた。

「ということなんだけど、協力してくれるかしら?」

「・・・これも何かの縁、ね」空舞さんは早坂さんの言葉を復唱した。「わかった。協力するわ」

早坂さんはニコッと笑った。「ありがとう。心強いわ」

「空舞さん、ありがとう」

「そいつ以外の妖怪を見た場合も報告してくれ」

空舞さんは瀬野さんを見て、首を傾げた。「どーゆう事?」

「ちょっと、順を追って話しなさいよ。ごめんなさいねえ、この人生まれつきコミュニケーション障害なの」

「順を追って話してるだろう。さっき話しはついたはずだ」

「こっちはお願いしてる身なんだから、言い方ってものがあるでしょう」

「だからお願いしただろ。してくれって」

「威圧的なのよ。声も顔も」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み