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文字数 862文字


「中条!伏せろ!」

「えっ」わけもわからぬまま反射的に伏せた。

ナイフが頭上を超えて鬼火に飛んで行き、穴をあけて貫通する。その時、早坂さんが走るのが見えた。さっき投げたナイフを木から抜き、それをまた素早く投げる。くるくると回ったナイフが鬼火に当たると、そこから炎に亀裂が入った。

「雪音ちゃん!行きなさい!」

わたしは、走った。後ろに意識を集中させながら、脚は緩めることなく、全力で。
2度目の攻撃がない事を確信したら、次は足を動かす事だけに集中する。

体感としては、一瞬だった。一瞬で車へと辿り着いた。手探りで車のキーのボタンを押し、鍵を開ける。トランクにある物を全て地面に降ろし、そこで止まった。
どうやって、開けるんだ?手探りで手掛かりを探すと、1番手前に窪みを発見した。指を入れ、持ち上げる。

「あった・・・」

その収納スペースには、それだけが置かれていた。布に包まれた細長い物。
手に持ち、驚いた。──重い。これを振り回すには、並の筋力じゃ無理だろう。
昔のお侍さんはこんな物を持って戦っていたのか──いや、そんな事考えてる場合じゃないだろう。

布を外し刀を手に取ると、不思議と重みが増した気がした。
凄い。なんて神々しい物体なんだろう。なんというか、これを持っていると自分がもの凄く強い人間になった気がする。

──いやだから、そんな事を思っている場合じゃない。鞘をしっかりと握り、わたしはまた走った。
2度、枝に躓いて転びそうになったが持ち前の身体能力でカバーした。若干、右の足首に違和感を感じたが、アドレナリンがそれを忘れさせてくれる。今はただ走れ。

── 灯が、見えた。
そこへ向かって一直線に突き進む。

その時だった、── 視界が一瞬にして紅色に染まった。まるで、何かが爆発したかのように。そして次の瞬間、凄まじい熱風が前から押し寄せた。

「ぅおっ!」身体が押し戻され、刀と共に地面に倒れ込んだ。

身体が、熱い。ヒリヒリと火傷をしたみたいだ。

──今のは、なんだ。何が起きた。
この距離でこれだけの爆風。あの2人は?
刀を支えにして立ち上がり、走った。
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