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文字数 986文字


「何してるの?」

一瞬、背筋が寒くなった。

「・・・怒らないって約束してくれます?」

「怒られるような事なのね」電話の向こうから溜め息が聞こえた。「何をしたの?」

「え──、今日は朝方、空舞さんに起こされまして・・・」

それから今に至るまでの経緯を説明する間、早坂さんは何も言わず黙って聞いていた。泳斗くんの事もわかっている事は全て伝え、話し終えたところで、──呻くような溜め息が1度。

「いや、その、早坂さんに電話しようと思ったところに、早坂さんから電話がありまして」

我ながら、言い訳じみている。

「思うのが遅いのよ」

「うっ・・・スミマセン」

「何処の公園?」

「え?っと・・・」公園の名前と最寄りの駅を伝えると、了解とだけ言い、通話が切断された。

来ーる!きっと来る!頭の中であるテーマ音が流れた。

「なんだって?」

「たぶん、今から来ます。ぜったい」


それから15分も経たずして、早坂さんはやって来た。向こうから歩いてくる姿が炎をまとっているように見えて、思わず逃げ出しそうになった。やたらゆっくりなのも逆に怖い。
目の前まで来た時、もはやわたしの目は泳ぎまくっていた。

「こんにちは。いいお天気ですね」

「曇ってるわよ」

目を合わせられないわたしの顎を掴み、早坂さんは自分に向かせた。
真っ直ぐに見つめられ、わたしの目はそれから逃れようと勝手に閉じる。

「なに、キスして欲しいの?」

「違います!」

早坂さんは溜め息を吐き、わたしの頭に手を置いた。

「足の怪我はどう?」

いつもの優しい口調だ。すぐに説教タイムが始まるかと思ったのだが。

「大丈夫です。ここまで来れたので」

「病院には?」

「・・・こーゆう事情だったので。それに行くまででもないので大丈夫です」

「それはあなたが決める事じゃないわ。まったく、大丈夫しか言わないんだから」

今のわたしに反論できる余地はない。

「早坂さん、1人ですか?」

「ええ、瀬野は連絡つかないからメールだけ入れといたわ。それで──この子が例の子ね」

早坂さんは岩場にちょこんと座ってる泳斗くんを見た。

「泳斗くんです。泳斗くん、この人は早坂遊里さんだよ。身体は大きいけど怖くないからね」

「あらあら、ずいぶん可愛らしいのね。色んな意味で」

早坂さんは泳斗くんの全身をまじまじと見た。とくに、下の方を。

「ですよね。わたしもビックリしました」

「泳斗くん、ね。ずいぶん良い名前をつけてもらったじゃない」


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