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文字数 681文字


早坂さんは足元の小石を手に取ると、前に出た。それを大ムカデの頭に向かって投げる。触覚の間に命中すると、大ムカデはピクリと動いた。顔が早坂さんを向くが、何もしてこない。

「図体の割に臆病なのかしら?」

早坂さんの挑発が通じているかはわからないが、頭がゆらりと動き、触覚の下から鋭い牙のような物が顔を出した。大きい鎌のようだ。それが早坂さん目掛けて襲いかかる。

早坂さんは、ギリギリのところで横に回避した。大ムカデは顔を地面に埋めている。今なら頭を狙えるのに──早坂さんも瀬野さんも、動けない。

「なにアレ・・・」

大ムカデが触れた地面の周りが、暗闇でもわかるほど黒く、浸食されていく。その牙がゆっくりと離れた時、そこは雨でも降ったかのように、水溜りが出来ていた。

「毒ね。雪音ちゃん!近づいたらだめよ!」

近づくも何も、わたしは2人よりこんなにも離れている。それより、その毒は早坂さんのつま先ギリギリの所まで侵食している。

どうすればいい──・・・考えろ。

"一気に頭を狙うしかない"
それには、どうすればいい。高い所から狙えれば。林に戻って木を登り、奴の頭に飛び降り、ナイフを突き刺す。
木を登るのは可能だが、そこに至るか?奴の隙をついて運良く登れたとしても、そこまで誘導してもらわないと無理だ。その間に、2人に何かあったら──。

クソ・・・あの長い胴体をどうにか登れさえすれば──。

「・・・・・・あ」

わたしは、頭に浮かんだ事をすぐに脳内シミュレーションした。3通り考えて、2つは失敗に終わったが、残りの1つが思い通り行けば、"イケる"。

そうだ。あの長さを、利用してやろうじゃないか。







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