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文字数 923文字


「あたしが心配してるだけって、わかってくれてるなら、ありがたいわ」

早坂さんはわたしの顎に手を当て、自分に向かせた。いつもの、優しい顔だ。

「そうね。あたしはあなたの事がたまらなく心配なの。そのせいでつい、感情的になってしまうわ。ごめんね」

「だから、謝らないでください・・・早坂さんに謝られると罪悪感で死にたくなります」

「なんでよ」

「なんでもです」

「・・・あたしの事、嫌いになってない?」

まったく、意味がわからなかった。だから、そのまま返す。

「意味がわからないんですけど」

「怒らせたから、嫌われちゃったかなって」

「そんな事あるわけないでしょ」

思わず、タメ口になってしまった。それほど馬鹿馬鹿しい質問だから。
早坂さんは、ふうと息を吐きながらシートにもたれた。

「良かった。安心したわ」

そんなふうに思ってたのか。「わたしが早坂さんを嫌いになる要素なんて、どこにもないですよ」

「・・・口うるさくても?」

自覚はあるんだ。「もう慣れました」

「アハハ。そう。感謝ね」

早坂さんの笑顔を見て、やっと安心出来た。モヤモヤが全部消え去る。

「雪音ちゃん」

「はい」

「1つ、お願いがあるんだけど」

「なんですか?」

「携帯の電源を切るのだけは、やめてくれないかしら」

「あ"っ!」そうだ、まだ戻してなかった。すっかり忘れていた。「ごめんなさい・・・戻すタイミングを失ってしまい・・・ホント、ごめんなさい」

「いろいろ悪いほうにばかり考えちゃって、気が狂いそうになるのよ」

「はい・・・ごめんなさい」謝る事しか出来ない。

早坂さんはシートにもたれたままわたしの頭に手を乗せ、微笑んだ。胸がぎゅうっと締め付けられる。

「それで、その喋るカラスだけど、それ以来あなたの前には現れてないの?」

やっぱり、少し警戒しているのか。「はい、今朝会ってからは」

「そう」

「早坂さん、空舞さんは・・・危険ではないです」

早坂さんはわたしを見つめ、頷いた。「ええ。あなが言うなら信じるわ」

嬉しくなって自然に笑みが出る。「ありがとうございます」

早坂さんは真面目な顔でわたしを見つめると、手を伸ばし、わたしの頬に触れた。そうかと思えば、今度はブニッとつねられる。

「なんでふか・・・」

「あんまり人前でそーゆう顔しちゃダメよ」

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