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文字数 856文字


「ふふ、どうしたの?キョロキョロして、何か気になる?」

ルームミラー越しに早坂さんと目が合った。

「何気に初めて乗るなって、後ろに」

「ああ・・・来る前にこの大男、後ろに行かせればよかったわ。雪音ちゃんはあたしの隣って決まってるのに」

「大男はお前もだがな」

決まってるんだ。「後ろも広いですね。わたしのベッドより広いな」

「アハ、シート倒せばそれなりに広いわよ」

後方を覗いて、気づいた。「あれ、後ろって座席なんですか?」

「ええそうよ、シート倒して物置きにしてるだけで、本来は7人乗りよ」

「ほえー」えらい広いトランクだと思っていた。確かに、収納ケースやら道具箱やら、いろんなものが置いてある。バカデカいキャリーケースが何のためにあるのか、よくわからないが。──ああ、前に車に着替えを一式積んでいると言っていたから、これに入れているのかな。


「よかったわ」

「え?」

「てっきり、怒ってるものと思ってたから」

「・・・怒ってませんよ」

「俺は怒られたぞ、お前が電話切ったあとに。余計な事喋るな降ろすぞって」

「それが余計な事なのよ!ホントに降ろすわよ!」

「・・・今度から、瀬野さんに連絡します」

「ええ!?なんでよ!」

「瀬野さんはわたしを無視しないでくれるから」

「無視したわけじゃないのよぉ・・・わかってちょうだい」

「わかってるから、瀬野さんに連絡します」

「俺は構わないぞ」

「お黙りっ!わかったわ、今度からちゃんとあなたにも連絡するから。ね?」

「・・・信用出来ないな」鏡越しの視線を避けて、窓に呟いた。

「ガーン・・・」

「口では何とでも言えるしな」

「アンタ、ホントに窓から放り出すわよ。雪音ちゃん、約束するわ。信じてちょうだい」

チラっとルームミラーを見ると、綺麗な目がこちらに訴えている。これ以上は運転にも支障をきたしそうだ。

「約束。ですよ」

「ええ、約束するわ」

──・・・なんだかなあ。約束したところで、この人はわたしの身の安全を最優先に考えているから、いざという時は、わたし抜きで動くと思う。自惚れかもしれないが、わたしはそれが1番こわい。



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