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文字数 965文字


その日、わたしは、バターをたっぷり塗った食パンを食べながら、ベランダで揺れている一際大きいシャツを眺めていた。

早坂さんは言った。本当に要らないから、あなたの好きなようにしなさいと。
加えて、クリーニングに出して返したりなんかしたら、覚えておきなさい、と。
それには快く甘えるつもりだが、これを、わたしにどうしろと?捨てるわけにもいかないし、気になってしょうがないんだが。

あれから5日。雨天が続き、やっと洗濯が出来たところだ。それまで、早坂さんからの連絡はない。別に、用事がなければ来ないことはわかってる。静かすぎて不安になるのは、ここ最近が立て込みすぎていたからで。

携帯が鳴り、秒の速さで手に取った。
「・・・珍しい」と、口にしてしまうほどの相手だった。

【久しぶり〜、雪音、元気か〜?】

久しぶりどころか、中学以来、1度も会ってない同級生だ。むしろ、お互い、よく連絡先が残っていたと思う。

【久しぶり〜、周平(しゅうへい)、元気だ〜】と返す。

すぐに、返信があった。【今どこにいる?地元離れてるか?】

周平が言う地元は、あそこしかない。【いないよ。なんで?】

【マジか。まあいいや、雪音と連絡取りたがってる奴がいるんだけど、連絡先教えていいよな?】

──唐突に、なんなんだコイツは。【意味がわからん。誰?】

【人伝てだから俺も知らねーんだわ】

【はい?どーゆうこと?】

【とりま、教えとくな。俺今仕事中だから、検討を祈る!】

【いや、意味がわからない。ちゃんと説明しろ】

そして、連絡が途切れた。怒りに任せて電話をしてやろうと思ったが、仕事中だという言葉を思い出し、震えながら留まる。

──わたしと、連絡を取りたがってる人?
周平からということは、中学時代の誰か?まるで、見当も付かない。





それが誰かわかったのは、夕方、店に向かう途中だった。ポケットの携帯がブブっと揺れ、歩きながら確認する。

【雪音ちゃんですか?】知らない番号からのメッセージ。

周平が連絡先を教えた人物か。【そうです。どちら様ですか?】不信感を抱きながら、返信する。──が、しばらく応答が無かった。

新手の嫌がらせか?わたし、アイツに恨みでも買ってた?後で電話して問い詰めてやろう。──・・・周平の番号、知ってたっけ?電話帳を確認しようと携帯のロックを解除すると、ピコンと新着メッセージが表示された。












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