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文字数 835文字


早坂さん宅へと向かう当日、起きて鏡を見たわたしは思わず発狂しそうになった。
頬に吹き出物が2つ。それも、なかなかの大きさだ。ここ連日の飲酒と深夜の海外ドラマ鑑賞という不規則な生活のバチが当たったんだろう。なにも今日現れてくれなくても・・・。
ポーチの中のコンシーラーを確認する。今日はキミにお世話になりそうだ。

萎えた気持ちでコーヒーを淹れ、昨夜良いところで終わった海外ドラマの続きを再生する。
リアルタイムで事が進む刑事物のドラマは、昔爆発的に流行ったが、その時はなぜか観る気になれず、今になってデビューしたのである。これがまた、時間を忘れるほど面白い。ハラハラドキドキの連続で常に続きが気になり、あと1話!が永遠に続くのである。


案の定、観始めたらあっという間に午後になっていた。
シャワーを浴びて、化粧に取り掛かる。この憎き吹き出物をコンシーラーでしっかりと隠し、いつもよりパウダーを多めに塗る。若干ケバくなった気がしないでもないが、これくらいは許容範囲だろう。

5時半に迎えに来るという事になっているが、あと1時間はある。迷わず、ドラマの続きを再生した。
わたしの好きな登場人物が銃で撃たれるという衝撃的な展開で1話が終わったが、続きを観る時間はない。今日も帰ってから深夜コースだと確信しながら家を出た。

10分前に出たが、早坂さんの車はアパートの前に停まっていた。しかし、肝心の本人がいない。運転席にもおらず、辺りを見回してもいない。はて、いったい何処へ?

「あ、雪音ちゃん」

声がするほうを向くと、アパートの敷地の裏側から早坂さんが顔を出した。

「こんばんは。何してたんですか?」

「うん、ちょっと偵察」

「偵察・・・って、なにを?」

「あなたのお家」

「・・・なぜに?」

「セキュリティに問題あるのはわかってたけど、思ったより酷いわね。登ろうと思えば外から簡単に2階のベランダに行けるわよ。いつ引っ越すの?」

「・・・引っ越すなんて言いましたっけ、わたし。それに、簡単には登れないと思います」




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