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文字数 826文字


春香のこんな顔は、滅多に拝めない。あんぐりと口を開けて、言葉を失っている。
記念に写メでも撮ろうかと携帯のカメラを向けたところで、我に返った。

「あのセクハラジジイの連れ?」

「うん。今思えば、あの時、そのセクハラジジイが忠告に来たのかなって思った」

「本当に何もされてないの?」

「うん。ただつけられただけ」

「・・・ごめん。全然見抜けなかった」

「いやいや、春香が謝る必要ないでしょ。ていうか何もなかったし」

「早坂さんが来てくれたからでしょ」

「うーん・・・いや、たぶんあの人、何もしてこなかったと思うよ。早坂さんが来なくても」

「なんでわかるのよ」

「なんとなく」

「天然記念物のなんとなくなんて当てに出来ないわよ。しかし、腹立つわね。正直、あのジジイしか意識してなかったから、印象が薄いわ」

「そう!わたしもすぐに気づかなかったもん。最初は何処かで見たことあるなーって感じだった」

春香はわたしをギロリと見た。「アンタにも腹立つわ。なんで警察に突き出さないのよ」

「だからそれは・・・」

「まあ、早坂さんに感謝ね。すぐ駆けつけてくれるなんて、大事にされてるじゃない」

「・・・大事と過保護って、イコールなのかな」

「なによ、意味深ね」

──今日の昼間を思い返す。朝方ランニングに出かけたわたしは、10キロ程走り、帰ってシャワーを浴びた。その後また出かけて映画を立て続けに2本観た。
家に帰ってきたのは昼過ぎで、置いて行った携帯を見ると、不在着信が8件。
1番新しいのは、10分前だ。特に驚く事もなく、折り返す。
通話までのコール数と、その後の流れは、あえて省略しよう。

早坂さんが伝えたかったのは、前に言っていた、家に居るという座敷童子に会わせたいという事だった。昨日の電話はその事だったのか。わたしのせいで、それどころじゃなくなってしまったけど。

正直、座敷童子と言われても全くピンとこなかったが、興味を惹かれないわけではない。
店の定休日の明日、家まで迎えに来るという約束で話は終わった。

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