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文字数 872文字


「ちなみに、それって今日でもいいですか?」

「わたしは構わないわ」

「よかった。じゃあ連絡しよっと」

昨晩の早坂さんとの電話で、話はついている。今日もまた空舞さんが家に来て、承諾を得たら河原で落ち合おうと。来るとは思っていたが、正直、会う事に関しては渋ると思っていたから空舞さんも良い返事で良かった。

「その知り合いって、女性?」

「あ、男性です。男性2人」

「・・・そう」

明らかに下がる、声のトーン。「何か、問題ありますか・・・?」

「いえ。ただ、人間の男は野蛮なイメージが多いから。あなたの友達だから、そんな事はないでしょうけど」

憶測だが、空舞さんは言葉通り、人間が野蛮な行為をするところをたくさん見てきたのかも。男女に限らず、そんな人間は山ほどいる。

「大丈夫ですよ。あの2人は全然そんな、本当に良い人ですから。安心してください」





それから5時間後──。

「ハァ、ハァ、ハァ」

わたしは今、全力疾走で河原へと向かっている。

「あなた、足速いのね」

頭上を優雅に舞う空舞さんに返事をする余裕はない。
待ち合わせは11時。あれから空舞さんは一旦何処かへ行き、わたしは2度寝へと突入した。約束までは時間があるからとアラームをかけなかった結果が、これだ。家を出た時点で11時を5分過ぎていた。きっともう2人とも来ている。

「2度寝なんかするからこうなるのよ」

「だっ、だれのせいですかっ・・・」それには、反論せざるを得なかった。

「あら、わたしのせいだって言いたいの?」

「ハァ、ハァ、もう少しっ、遅く来てほしいって言いましたよねっ」

「だから昨日より遅く来たんじゃない」

「はっ、早すぎますそれでもっ・・・」

「わかったわ。明日はもう少し遅く行くわ」

来るのは確定なのか・・・さらに疲労が増した気がする。

遊歩道をランニングしている人を2人抜いた。すれ違う人は、みんなわたしを見る。そりゃあ、こんなバカみたいに全力疾走している女がいたら、わたしだって見る。

そして、わたしの特等席のベンチが見えてきた。2人の姿を確認した。2つのベンチに各々座っている。わたしは速度を落とさず、目標に向かった。
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