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文字数 1,019文字


車に戻りながら、気づいた事がある。
右足首、こんなに痛かったっけ?違和感は感じていたが、着地する度に鋭い痛みが走る。たぶん、最初に鬼火の攻撃を避けた時だな。
2人に気づかれないように軽くケンケン歩きをする。

しかし、前を歩いていた男はすぐに気づいた。振り返り、わたしの足元を見た。

「痛いの?」

「あー・・・若干?」

早坂さんは膝をつき、わたしのくるぶしに触れた。

「少し腫れてるわね」

「大丈夫です、ただの捻挫だと思うんで」

「まったく、痛いなら痛いって言いなさい?」

言わなくても気づかれましたけど。
早坂さんの手が伸びてきて何をしようか察したわたしは、その腕を掴んだ。

「あのっ、おんぶでお願いします」

「えー、わかった」

早坂さんが背中を向けてしゃがみ、その大きな背中に身を預けた。情けなし。

「・・・スミマセン」

「大歓迎よ」

「遊里、俺が変わるぞ」

瀬野さんがそんな事を言うのは珍しく、驚いた。

「なんでよ」

「いやお前、腕・・・」

「あーうるさい。あたしの役割り奪わないでちょうだいッ」

瀬野さんは呆れ顔で前へ進んだ。

「・・・早坂さん、もしかして、怪我してるんですか」

「してないわよ」

このしれっと感が、怪しい。

「わたし歩けるんで、降ろしてください」

早坂さんは顔半分をわたしに向けた。

「このまま抱っこに切り替えるわよ」

──これ以上、わたしに何が言えようか。

「ねえ雪音ちゃん」

「はい?」

「さっき謝ってたのは、何に対して?」

ああ──さっき、もう駄目だと思った時の──聞かれていたのか。

「2人に対してです」

「なんで?」

「・・・役に立てずに、ゴメンナサイって」

早坂さんは上を向き、はあーと息を吐いた。

「今、あたしが考えてる事わかる?」

「え?」

「あなたを檻に閉じ込めて、目を離さずずっと見ていたい」

「・・・前も言ってましたねそんなこと」

「そうね。半分冗談だったけど、今は本気でそうしたいと思ってるわ」

半分は本気だったんだ。

「檻は、勘弁してください」

「檻じゃなければいいの?」

「・・・いや、ていうか!早坂さんだってわたしの為に無茶しすぎです。さっきだってわたしに覆い被さって・・・」

「まあ、あれじゃ守れないわよね」

「そーゆう事じゃなくてっ」

「いいじゃない。あなたと一緒に燃えて死ねるなら、それはそれでアリよ」

「よく・・・ありません」そう言いながらも、内心嬉しいと思う自分がいた。

なんで、そう思うんですか?
喉まで出かかった言葉を、飲み込んだ。みんなが無事だった。今は、それだけでいい。
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