p.15

文字数 835文字


「今帰ったお客さんです。春香さんが不倫だって言うんすよ」

「んー、そうかなあ。付き合ってるのは間違いないけどね」

「なんで!?」即、春香が食いついた。

「テーブルの上で何度か手握り合ってたから。俺厨房から全体見渡せるからさ」

「手ェ握るってことは、間違いないすね。不倫かはわかんないすけど」

「店の中では手を繋ぐのに、外では繋がない・。人目を気にしてるって事よね。つまり・・・」

「不倫すか?」

「絶対そうよ。というか、そうであってほしい」

「なんで?春香ちゃん、不倫願望でもあるの?」店長はいつもの椅子に座り、タバコに火をつけた。煙がわたしのほうに向かってきて、メニューで扇ぎ返す。

「まあ、禁断の恋ってのに、ちょっと憧れはあるかも・・・」

「例えば?」今度は一真くんが食いつく。

「んー、不倫は当たり前だし・・・教師と生徒とか?」

「それで言うと、春香さんは年齢的に教師側になりますよね」

「そうね。年下はダメよ。他にあるかしら・・・ああ、人間以外との恋とか」

「・・・人間以外?」

「一真くん、本気で聞いたらダメだよ。それより、不倫は当たり前に突っ込まないの?」

「そうよ、ヴァンパイアとの禁断の恋!」

「アホくさ。映画の見すぎだ」

「そういえば、そんな映画流行りましたよね」

「じゃあさ、じゃあさ、経営者と従業員の恋は?」店長の嬉しそうな顔の意味は、わか
る。

春香は、うーんと考えた。「まあ、それもいいですね。大きな会社の社長で、メチャクチャいい男なら」

店長は現実から目を背けるように、窓の外を見た。「凌ちゃんとこ行って、慰めてもらおうかなあ・・・」

「あ、俺も行く予定でした。なんか、新作の餃子開発したみたいで、試食しに来いって指令が」

「あ、そうなの。じゃあ、みんなで行っちゃいますか〜?」

「賛成!」すぐに手を挙げたのは、春香だ。

「雪音さんも行くっすよね?」

「あ・・・」すぐに返事が出来なかったのは、昼間の一件があるからだ。早坂さんに連絡しなければ。

「えー・・・また断られるんすか。ガチでへこみそう俺」








ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み