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文字数 825文字



家に帰ってからお母さんに事情を話すと、すぐ未来ちゃんのお母さんに電話をかけてくれた。
しばらくして折り返しかかってきた電話によると、未来ちゃんは後頭部を数針縫ったが、入院はせず、翌日から通常通りの生活に戻れるとのことだった。

未来ちゃんのお母さんは電話の最後でわたしに代わり、お礼を言った。
雪音ちゃんのおかげで早く救急車を呼ぶことが出来たと。
でも、わたしはそれを素直に受け入れられなかった。むしろ、罪悪感でいっぱいだった。

あの子が、未来ちゃんを落とした。
あの子は、わたしにしか見えない。だからわたしのせいだ。そう思えてしょうがなかった。


その日の夜、仕事から帰ってきたばかりのお父さんに、お母さんは今日の事を"熱弁"していた。
まるで、わたしが未来ちゃんを助けたように。
雪音、凄いなぁと鼻高々しく頭を撫でられた時は、逃げ出したい気持ちになった。


この日、何度、口に出しかけただろう。
わたしが見たモノ。わたしにしか見えないモノ。それが、何をしたか──。

でも、やっぱり、わたしには言えなかった。

言ったところで、わかっている反応。
言ったことで、悪い事が起こってしまうかもしれないという恐怖。

わたしは、全てに蓋をした。
それでいい。それがいいんだ。そうするしか、ないんだ。



それから夏休みの間、未来ちゃんと会うことはなかった。
怪我をした翌日、わたしは未来ちゃんの家まで訪ねたが、今は寝ているからと面会を断られた。それは次の日も、その次の日も、ずっと続いた。


そんな"苦痛"の夏休みも終わりを告げ、久しぶりに学校へ登校する日。普段なら憂鬱に感じる休み明けも、わたしは楽しみでしょうがなかった。
やっと、未来ちゃんに会える。傷は治ったかな。病院で頭を縫った時、痛かった?家に帰ってから、何をしてたの?
聞きたいことが、いっぱいあった。

いつもより早く家を出たから、朝の教室は人もまばらだった。男子が数名、パンチやキックをしてふざけている。
それから10分程して、未来ちゃんはやってきた。




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