其の百九十三 朱とは?

文字数 1,688文字

「はぁ…。
とてもクリスマスとは、思えないわ…。」

朱と蒼の台風がぶつかり合っているなか、
ハチミツと大窄カイは
上崎レイジを連れて、洞窟に避難していた

ハチミツは呆然と嵐を見つめる

「そんなことしていても意味は無いぞ。
もう人がやることを超えてやがる。
観察しても、姿すら見えんだろうが。」

カイの言った通り、
外は自然災害そのものと化して人が生きてられる環境ではなかった
外に出ればたちまち皮膚は液体化し、
呼吸をすれば、肺からツララが飛び出るだろう

故に男3人で洞窟に籠るしか方法はなかった

「宮城キョウコ――ねぇ。
思い出したわよ。
彼女、24区校の1年生担任だったわ。」

「やけに詳しいな。
スパイでも送ってたか?」

「泉ソウマっていう、
私の後輩が教えてくれたの。
美人だからって言ってて、気にしてたけど。
あんなヤツとはね……。」

ハチミツが重いため息を吐いたとき
カイがつぶやいた

「朱――。」

「…………。
それがどうしたのよ――?」

「8月からだったよな?
【最初に】朱い瞳が特徴の虐殺者が現れたってのは。
そこから
9月
10月
11月
そして今月の…12月――。」

「えぇそうよ。
その度に、
死ぬはずのなかった人たちが、
次々と亡くなっていった……。
スイ君も――ッ。」

ハチミツが唇を噛んだとき、
急にカイは身を乗り出して
ハチミツの肩を掴んだ

「……違う――。
違うぞ――!!
【最初】じゃない!!

「え………?」

カイは肩を強く、
思い出させるように揺さぶり始める

「今年は2021年……。
最初じゃねぇ…3年前からだ――。
2018年に!!
俺らが中学3年のときに!!
一度会ってんだ!!
朱い目をした奴に!!

ハチミツの目が大きくなる

「カズミちゃんのお姉ちゃんのときの――……。
(あれ、お姉ちゃんの名前が――。)」

「そうだ!!
俺たちは………
(? あの女の名前はなんだった?)
………その姉の居場所を教えてもらったじゃねぇか!!
そこには居やしなかったが――。
だが、
あのとき居場所を俺たちに伝えやがった奴は!!
俺らも名前も
場所も知っていた!!
初対面にも関わらず!!

「そういえば…
じ、じゃあ何よ!!
【朱】のヤツ等は、いったいいつからここに居たのよ!?
確かにそのときは助言はくれたけど。
いまはただの虐殺者集団よ!!
一貫性も何も無いじゃない!!

「んなこと、俺が知るか……。
なぁ、ここで宮城キョウコを仕留めたとして、
終わると思うか?」

「どういう意味よ。」

「あの女を殺したとしても、
【分からないことが多すぎるんだ。】
さっき件といい……
そもそも――
【朱とはなんだ?】」

(吉田ミョウも朱瞳だった…。
アイツが最初から虐殺者なら、
どうして生徒会メンバーを選んで、高校生活を送ったのかしら?
夏までは普通の生徒だったし、私たちも疑わなかった。
ならそのときが一番の殺し時だったはず。
間違いなく、全員の虚を突いて、楽に終わらせることができたはずなのに――。)

「それが分からない限り、
コレは終わらない。
解決したとは言えん……ッ。
だからこれは絶好の機会だ。」

カイはチラッと外を見る

「宮城キョウコに――。
朱の本人に聞くのが、早い。
そうだろう上崎の先公……。」

彼が先生の方へと振り向く
上崎は横たわったまま、ピクリとも動かなかった

「先公――?」

「―――――。」

ここでカイがハッとして恐る恐る、上崎の心拍音を図った

「っ――!?
おいレン!!
お前洞窟から瓦礫集めて火を起こせ!!

ハチミツがその指示に驚きながらも尋ねる

「次はなにが起こったのよ!?

「クソ……っ。
油断した――!!
上崎の先公、心臓を止めやがった!!

彼は、羽織っていた学ランを破いて
削られた上崎の右腕に巻き付け止血をし、
肋骨を折る勢いで、心臓マッサージを始める

「看護のことは全く知らんが、
心臓が動いても、
このままじゃ出血死か凍死はするぞ!!
レン、お前のパワーならすぐ火くらい起こせるだろ!?

カイの勢いに
ハチミツは有無を言わず、体を動かし始めた

「クソクソクソがぁ!!
まだ死ぬんじゃなぇぞ!!
自分の女を置いて死ぬ奴があるかぁ……!!
まだ、なんにも終わってないんだぞ!!

マネキンのように冷たくなっている上崎に
必死に声を掛け続けた
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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