其の百七十 ルシフェルVS宮城キョウコ 【リベンジ】

文字数 1,891文字

来い―――

満月浮かぶ寒空と、舞台の幕のように揺れる炎と共に 二人は空に飛び立った

宮城キョウコはリードするように笑みを浮かべて

ルシフェルは手首の骨を鳴らして「上等」と言わんばかりに
瓦礫を巻き上げ炎をまといながら

朱と蒼の閃光が尾を残しながら交わる

男の手のひらから青色のエネルギー波が凝縮・拡散し、宮城に襲い掛かった

うねりながらも、確信的な殺意のソレは、高層ビルに当たり、黒煙と火を突き破りながら追いかけ始める


「小賢しいことを。」


彼女は余裕を含めた笑いを出しながら、上半身を翻したり、フィギュアスケートのようにクルクルクルと回転しながら、全てのエネルギー波をかわしていく

ルシフェルの目から見ても全く効果ないということは一目でわかるが、彼は顔色一つ変えずに打ち続ける


そうして爆炎の中を突っ切った先の空にまで達すると、女は振り返った

「さぁご覧なさい……!!」

鬼気迫る代行者が、猛スピードで突っ込んでくる中、白い冷気が女に集中し充実していく



「ッ――――!!!!!!」



肌の色は純白にそまり、逆さに向けた凍棘が薄っすらと織りなされ、氷に着飾れた姿が露わになる

その衝撃は、辺りの建物や、窓ガラスを破砕するレベルであった

しかしこのルシフェルだけは、物怖じせず、タックルによって宮城を弾き飛ばす

首元に打撃を受けた女だが、予測済みだったのか空中で後回転を施しながら地面に着地・離脱
そのままお返しの頭突きをお見舞い


額から流血するルシフェル
口元の血を吐き出す宮城

互いの姿を目に入れ合い、その流れで打撃の応酬に発展していく
手、腕、肘、指、蹴り、かかと落としや頭突きを繰り返しながら、再び上空に浮かび上がっていく


「ぃ――あ―――ッッッ!!!」


ルシフェルが渾身の右ストレートを繰り出したとき
罠にかかった虫を発見したかのような、口角を吊り上げた宮城の顔が目に止まった


宮城は腕を内から外へと回し、ルシフェルの腕を【柔術】を使って受け流した

ありあまった力が仇となり、ルシフェルはその態勢のまま、身体が不安定に前のめりになる

宮城キョウコ、男の腕を接地面としちょっとした距離をあける
そのわずかながらの慣性の力を、最大限に引き出し、

「――ぐッ……!?」

思い切り肘鉄をみぞおち喰らわせた

男の口から血が噴き出したが、間髪いれずに 体をグルリと回転させて後ろまわし蹴りで追加攻撃

顔面にあたったルシフェルは、顔を歪ませながら、炎に包まれたアスファルトにクレーターを作ることになった

土埃が辺りに舞い散るなか、岩をどかしながら空を仰ぎみる

その視線に、白く青い冷気が女の手の平に凝縮していた この状況でさえ見惚れてしまうようなダイヤモンドのごとき輝きであった

「ハァァ――ッッ!!!」

雫が一滴落とされる

それは、1 10 100 1000と枝木のように分散し、華を成しながら、雨のようにルシフェルを一点集中砲火し始めた

「ああああがあああああああ―――ッッ!!!!」

吸い込むだけで肺を凍らせるツララが何百本と、彼を襲い掛かる
冷気と衝撃とダメージで体が流されるままに晒される、
氷の雨は止むどころか、さらに強みを帯びていく


「―――!!!
クッソが………ッッ!!!」


しかし救済の代行者ここで体内のエネルギーを開放し、バリヤーとして纏わせる
氷に対して耐性を持ったルシフェルは、安全地から砲撃している宮城目掛けて飛び立った

襲い掛かるツララを 逆にバッサバッサと砕きながら、天を衝く蹴りが宮城キョウコに突き刺さる

「あ――ッ!?」

ルシフェルは蹴りで悶絶している宮城より、さらに上に飛び続け、垂直落下のライダーキックで次は彼女が地面に大穴を作り出した



周囲にはツララがあちこちに突き刺さり、クレーターのなかにはガラスの破片や木材ガレキに引火し巨大な焚火と化していた


スタっとルシフェルが着地する
攻撃を与えることはできたが、彼の顔はすぐさま暗雲に立ち込めた



巨大焚火を背景に、クレーターからコツコツと聞かせやってる感を出しながら、宮城キョウコが歩いてくる


(ダメージ無しか。
まいった…。黒豹の戦闘を観戦していたときから、成長しているとは思っていたが
あの女 2週間も経たないうちにさらに強くなってやがる。)

ルシフェルは拳についた霜を見やる
霜は張り付いて皮膚にヒビを作り、血の結晶を作っていた

(異常だ。 いったい何が あいつをそこまで駆りたてている?
自分のボスを失って、同僚を殺して、いったいなにを大儀としている?
宮城キョウコ――お前はいったい、なにを望んでいる?)


「ウォーミングアップはもういいかしらぁ?」


底の知れない笑み止まず 
ただただ夜だけがふけていき、朝日はいまだ昇らない

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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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