其の七十一 上には上がある!

文字数 1,050文字

殺さなければならない。

お前たちが家族を守りたいと思うなら。

お前たちがこの惑星に生きる生命であるのなら――

この世に『異常』を残してはならない






「――犬神さん。少し張り詰めすぎでは?

目が怖いのですけど?」

三島は、虚空を睨み続ける犬神にささやく。

「そちらも大変だとは分かりますけど、

あの、そんな目をされると私たち(協力者)としても、やりづらいのですが。」

「はッ!? す、すまない!

つい焦ってしまった……。」

般若のような顔から一変して、申し訳なさそうな顔になった犬神。

鹿島と桜の姿はすでに無く、カラカラと傘の空しい音が響くだけになっていた。




「『神官』『代行者』『特別措置者(イレギュラー)』『浅界』『深界』『惑星』……ねえ。
ほんとにそんな存在があるの?」

「俺たちの存在が何よりの証拠だ。古来より『惑星』の守護を任じられた『神官』という存在のな。」

「ふー……ん。

じゃあ、犬神さんも超自然的な存在ってこと?

たとえば、年齢が1000歳超えてるとか?」

刑事の顔はよそへとやったのか、三島はごく普通の女の子のように冗談をいった。

それをため息をつきながら犬神は答える。

「1万と3千歳だ。」

「――ぇ……」

彼女の顔が一瞬で氷づく。

「ふむ。お前たち人間からすればそうなるのも無理はない。

だが、俺はまだまだ若い部類だ。

うーんっと、千流殿が――鶴のお方がそっちの警察本部に来ただろ?

そのお方が、……6500万歳だったはずだ。

万樹殿がそれより――おい三島。」

三島は空を見上げて、右手の甲を左目に被せるように置いた。

「三十路ってちっぽけなものかもねーーー。」

無理やり自分に言い聞かせるように、大きな棒読みを発声した。



ところで、あなた達の崇める『惑星』はどれくらい……?

そりゃあ、中学、高校でならっただろ?4600000000歳だ。



女刑事は眩暈を起こした。






「頭がおかしくなりそう。」
げっそりとした表情を浮かべてながらも、三島は辺りを見渡す。

「三島よ。少し休憩するか?

もう昼どき。その恰好じゃ立ってるのもきつかろ。」

犬神の言う通り、三島の姿は見てるだけで暑さを覚える、黒くピッチリとしたスーツだからだ。

彼女の顔を、汗が通過していく。

「いいえ。大丈夫。

私のことより、周りが優先よ。」

仕事熱心らしい彼女は汗を乱雑にぬぐって、再度歩き始めて、



「!――、大丈夫ですか?あっち側持ちますよ!」

そして上半身を覆う程の、どでかい段ボールを背負った女性教師を発見した。

「す、すみません――!た、助かります――!!」

教師の胸元から、

『一年二組 担任 宮城キョウコ』

という名札が揺れた。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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