其の八十八 三島の意志

文字数 1,094文字

9月29日 17:00

先祖を迎える花々は焼け散った

夏の日光を浴びた、生き生きとした植物は、家族を持つ肥えた猫は、キラキラ太陽を分身させていた川は――

全て灰と化し……蟲に飲み込まれていった。

そんな中、横殴りの暴雨をなりふり構わず駆ける一人の刑事の姿があった。

……………

………………………

『いくらなんでも危険です!!
あの山の光景を見たんでしょう!!??
あの戦いに入り込んで救助するだなんて――馬鹿げてますよ!!』

新人警察が喚くのを横目に、三島は黒い手袋を装着し、拳銃の確認していた。

『だいたい……
今まで起こった事件は――彼らが勝手にやってきたから起こったんですよ。
神官とか救済の代行者とか名前が違うだけで……ッッアイツ等の内輪揉めのせいであたい等が死ぬ目にあってるんですよ!!』
『………そうね。』
『それで死んだらあんまりにも『理不尽』ですよ!!』

ひとしきり言いたいことをいったのか新人は肩で息をしていた

腰まである髪を結ぶために、口に咥えていたヘアゴムを手に取る
雨のせいか、ゴムの色がずいぶんとくすんで見えた。

『そうね。君の言う通り、彼らの問題だから協力関係なんか結ぶ必要はなかったのよ。』

新人の目が一際大きく開かれる。

『でも私たちは警察じゃない?

犯罪人を捕らえる人。

事件を解決する人。

こまっている人がいたら助けるひと。』

横にたってある民家に4Ⅿほどの蜘蛛の残骸がぶつかり倒壊していく。
異常な状況とは対照的に三島の声音が柔らかくなっていく。

『世の中にある事故や事件や災害は、全部『理不尽』なものよ。
だけどねそれを肯定してしまったら

なの。
うん………
うまく言葉ではいえないけどね。
でも肯定しちゃったらわたしの胸が痛むんだ。』



走りながら、胸に手を置いて深呼吸をする

「救済の代行者って言っても、子供が倒れてるんだったら見捨てていいはずがないじゃない!!!」






――――――――――――――――

木々はほとんど吹き飛び、翁の頭を思わせるような山へと果てていた
雨はぱらつくくらいに落ち着き
炎もくすぶる程度
群衆を思わせた蟲たちは紫色、緑色のネバネバした液体をぶちまけながら、仰向けになって息絶えていた。

『お前たちはこの惑星をおびやかすガン細胞そのものだ。
無益に生命を踏みつぶし
無益に街を崩壊させる

生存本能を履き違えた欠陥品どもに――生きる資格など無い。』

息絶え絶えの『廃棄物』に大神はそう吐き捨てた。

『まったく、何処から生まれたのか。』



怒りに含まれた呆れと共に神官は睨み付けた



「『生まれ行く生命を祝福する舞台』……?

おまえたちが、

が『生命』を語るか?」

それまでヘラヘラと弾けていた男が、重く口を開いた。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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