其の二十四 副会長からの質疑
文字数 1,282文字
そうして、暴君の嵐が去って23分後の18時。
室内には、ほうきを持って掃除をしている副会長と、棚のなかにファイルをしまっている会長の二人だけが残っていた。
「帰らないのか……?」
「……帰る気分にならなかったので。」
議会で率先して進行するしっかりものであるはずなのに、この場かぎりでは、ぎこちのないトークになっている。
彼のほうは、部活の視察、教師陣との打ち合わせてついさっき部屋に戻ってきたのだ。今はその片付けをしている最中である。
彼女のほうは、いつでも帰ることは可能だった。あの騒動の後片付けはハチミツとスイも一緒に行ったため、意外にもすぐ終わった。
だから残る必要性はない。しかしハチミツ達の帰りの誘いは断り、いまそこに居残っている。
彼女には大変気持ちの悪い状態が続いていた。
こんこんと、薄い疑問が胸の中で霧のように立ち込めている。
――視界は悪いが先はみえるため転ぶことはない。悪影響はない。だからこそ、この『霧』を払うべきかなのか――
その段階のため、行動は起こさず、視界の悪いどんよりと、灰色の空気を進むことに気持ちの悪さを覚えていた。
彼女がそこにいる理由は、『霧』を払いたかった――のかもしれない。
「どうして、大窄カイは『暴力』というものを使うのでしょうか?」
「?――」
突然の質問であったためシンは戸惑った。
「彼だって……悪だということに自覚はあるはずなのに。分かった上でやっているのでしたら、尚更分かりません。」
アヤカはシンの方は見ず、室内に響くほどの大きさで喋り続ける。
それは質問というより、一人言に近かった。
「良い子ちゃんの演技…?そもそも『ハチミツ』って名前いつから使いだしたんだろ……?」
そこで彼女はバッとシンの方を見て謝った。
「すいません――うるさかったですか?」
「ううん大丈夫。でも、どうしてそんなことを?」
「上崎先生に教えてもらったんです。頭で分からなかったら、口に吐き出し耳に入れ直せって。」
恥ずかしいそうに目線をしたに落として、微笑むアヤカ。
対照的にシンの表情は一瞬目を見開いた。
「恥ずかしいことに、私って何にも知らなかったんですよ。どうしてかなーって……。」
彼女はそれらの疑問を濁したが、この際すぐに『霧』を払うためにはっきりと聞いた。
「いえ、会長、私には分からないことがあります。」
「なんだい…?」
シンのいつもの顔へと戻っていた。
「4月のカズミの事、5月の散策のこと、そして…今回の私のことといい、……吉田先輩には助けられてきました。生徒会には吉田先輩が必要ということは、まあ、納得はしました。
しかし――6人という原則を破ってまで、わざわざ生徒会に『吉田ミョウ』を7人目として入れた理由が、私には分かりません――。」
アヤカはキッチリとシンの目をみて質疑をぶつけた。『霧』の根源と思われる疑問を。
「――……。」
シンは何かを諦めたように右の拳を音もなく開いた。
「逆だよ。」
「?」
「生徒会にアイツが入ってきたんじゃない。
室内には、ほうきを持って掃除をしている副会長と、棚のなかにファイルをしまっている会長の二人だけが残っていた。
「帰らないのか……?」
「……帰る気分にならなかったので。」
議会で率先して進行するしっかりものであるはずなのに、この場かぎりでは、ぎこちのないトークになっている。
彼のほうは、部活の視察、教師陣との打ち合わせてついさっき部屋に戻ってきたのだ。今はその片付けをしている最中である。
彼女のほうは、いつでも帰ることは可能だった。あの騒動の後片付けはハチミツとスイも一緒に行ったため、意外にもすぐ終わった。
だから残る必要性はない。しかしハチミツ達の帰りの誘いは断り、いまそこに居残っている。
彼女には大変気持ちの悪い状態が続いていた。
こんこんと、薄い疑問が胸の中で霧のように立ち込めている。
――視界は悪いが先はみえるため転ぶことはない。悪影響はない。だからこそ、この『霧』を払うべきかなのか――
その段階のため、行動は起こさず、視界の悪いどんよりと、灰色の空気を進むことに気持ちの悪さを覚えていた。
彼女がそこにいる理由は、『霧』を払いたかった――のかもしれない。
「どうして、大窄カイは『暴力』というものを使うのでしょうか?」
「?――」
突然の質問であったためシンは戸惑った。
「彼だって……悪だということに自覚はあるはずなのに。分かった上でやっているのでしたら、尚更分かりません。」
アヤカはシンの方は見ず、室内に響くほどの大きさで喋り続ける。
それは質問というより、一人言に近かった。
「良い子ちゃんの演技…?そもそも『ハチミツ』って名前いつから使いだしたんだろ……?」
そこで彼女はバッとシンの方を見て謝った。
「すいません――うるさかったですか?」
「ううん大丈夫。でも、どうしてそんなことを?」
「上崎先生に教えてもらったんです。頭で分からなかったら、口に吐き出し耳に入れ直せって。」
恥ずかしいそうに目線をしたに落として、微笑むアヤカ。
対照的にシンの表情は一瞬目を見開いた。
「恥ずかしいことに、私って何にも知らなかったんですよ。どうしてかなーって……。」
彼女はそれらの疑問を濁したが、この際すぐに『霧』を払うためにはっきりと聞いた。
「いえ、会長、私には分からないことがあります。」
「なんだい…?」
シンのいつもの顔へと戻っていた。
「4月のカズミの事、5月の散策のこと、そして…今回の私のことといい、……吉田先輩には助けられてきました。生徒会には吉田先輩が必要ということは、まあ、納得はしました。
しかし――6人という原則を破ってまで、わざわざ生徒会に『吉田ミョウ』を7人目として入れた理由が、私には分かりません――。」
アヤカはキッチリとシンの目をみて質疑をぶつけた。『霧』の根源と思われる疑問を。
「――……。」
シンは何かを諦めたように右の拳を音もなく開いた。
「逆だよ。」
「?」
「生徒会にアイツが入ってきたんじゃない。
吉田が生徒会を作って、僕達が入らせられたんだ
。」