其の百九 黒豹
文字数 1,639文字
【ルシフェルが宮城キョウコとの接触を果たしたとき】
ガャアあああぁぁっぁぁぁああああああ―――!!!!
黒い毛を纏ったサーベルタイガーは、桜刑事が率いる群衆へと襲い掛かっていた。
その巨躯の肉体と鋭牙と大爪に住民はたちまちパニックに陥った。
うわああまた化け物だぁぁあ!!!逃げろ逃げろ!!!
――こういった具合で群衆は右往左往とするばかりで化け物との距離はまったく変わらぬばかりである。
や、やめて!!やめてやめてっ!!それ以上腕は曲がらないの――っっ!!
ぼきりボきりと間接が悲鳴を上げて、オモチャのように折り曲げられ、か弱い住民たちは化け物の口の中で唾液とともに胃の中に入っていく。
それを見てさらに大声で騒ぎ立てる群衆。
「こっんのおおおっっ!!!!」
そんな混ぜこぜになった状況で桜刑事ただ一人がサーベルタイガーに鉄槌を下した。
「お前も【サンジョウ】やら【ぺルム】やらの仲間なんだろ!!
来い!!ぶっ殺してやるッッ!!!」
その蛮勇さに嫌気が指すのか、化け物は血とタンが混じったゲップをしたあと桜刑事へとゆっくり歩を進めていく。
「桜刑事!!!」
暗闇に紛れていく桜の背中に、女警官は声を立てた。
「そんな……!!そんな自己犠牲みたいなことはやめて下さい!!!
あなただって11区で負った怪我が治っていないんですよッ!!!」
――実のところ桜の左腕は肩から先が切断されたままであった。
治療はされているがそれでも万全とはかけ離れた具合である。
「刑事殿だってそんなことは分かった上でバケモンを引き受けたんだ!!
この坂道を下りきったら23区に着く!!お前も手伝えっ!!」
男警官はそう述べた後、群衆の誘導へと向かった。
(わたし達って弱いなぁ。……………。)
女警官は涙目になった黒い瞳で桜が行き去った道を見つめ、誘導へと向かった。
――――――――――――――――――――――
一面は畑に覆われ、24区へと通じる道路が一直線に伸びている
「でぇええいいい!!!」
そんな中に耳を指すような金属音が一つ響き渡る。
「ぐ……っ……!!!」
化け物の大爪に黒い警棒が震えながら接していた。
「っっあああああ!!!!」
爪、頭、喉元に重々しい打撃を繰り出すが、サーベルタイガーは微動だにしない。
「は――!!」
果敢に攻める桜をよそ目に、黒い尻尾が桜の体を捕縛する。
――グルルルルぅ……!!
そうして身動きを封じた人間相手に、化け物は右手を握るような仕草をしたあと、
「……!?」
ボクシングのようにパンチを繰り出した。
なんてことのないパンチ。だが、刑事はアスファルトにヒビを作りながら、水たまりが張った畑の中に転がり続けて行った。
(咄嗟に右腕でガードしたが……、頭に直撃したら脳みそが飛散したな……)
視界がボンヤリと滲みながら、泥水に揉まれて茶色くなったシャツを確認し、口に含んだ血を吐き捨てる。
「っちぃ!!?」
本能的に体を動かした。
先程立っていた地面は陥没し、煙の中から赤い瞳をもった化け物が迫ってきていた。
疲労か。恐怖か。桜は尻もちをついた。
不意に先の無い左肩を見る。
――悉くを燃やす炎【サンジョウ】
――数多を腐敗させる毒【ペルム】
――鉄のような冷たい氷【オルドビス】
(ここまで差があるなんてな。手も足もでねぇ……。
だが、あの赤い目はなんだ?あの赤い眼にはどんな意味が?)
粘りのある赤く黄色い牙が眼前に迫ってくるさなか、桜はそんな疑問を持った。
…………ぉぉぉぉぉ
なんだこの声は?
見つけたぞぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!
その青年は猛スピードで突っ込んできた後、その石のようにゴツゴツした拳でサーベルタイガーの顎を殴り飛ばした。
ガぁぁああ………!????
化け物は侮っていたのか情けない声で、だが確実に10メートルほどは引き下がっていた。
「47区でやり合って、急に走り出したかと思えば24区にいやがるとはなぁ!!!」
22:19
両手の骨を鳴らしは威風堂々と構えるはこの男【大窄カイ】夏ぶりの登場である。
ガャアあああぁぁっぁぁぁああああああ―――!!!!
黒い毛を纏ったサーベルタイガーは、桜刑事が率いる群衆へと襲い掛かっていた。
その巨躯の肉体と鋭牙と大爪に住民はたちまちパニックに陥った。
うわああまた化け物だぁぁあ!!!逃げろ逃げろ!!!
――こういった具合で群衆は右往左往とするばかりで化け物との距離はまったく変わらぬばかりである。
や、やめて!!やめてやめてっ!!それ以上腕は曲がらないの――っっ!!
ぼきりボきりと間接が悲鳴を上げて、オモチャのように折り曲げられ、か弱い住民たちは化け物の口の中で唾液とともに胃の中に入っていく。
それを見てさらに大声で騒ぎ立てる群衆。
「こっんのおおおっっ!!!!」
そんな混ぜこぜになった状況で桜刑事ただ一人がサーベルタイガーに鉄槌を下した。
「お前も【サンジョウ】やら【ぺルム】やらの仲間なんだろ!!
来い!!ぶっ殺してやるッッ!!!」
その蛮勇さに嫌気が指すのか、化け物は血とタンが混じったゲップをしたあと桜刑事へとゆっくり歩を進めていく。
「桜刑事!!!」
暗闇に紛れていく桜の背中に、女警官は声を立てた。
「そんな……!!そんな自己犠牲みたいなことはやめて下さい!!!
あなただって11区で負った怪我が治っていないんですよッ!!!」
――実のところ桜の左腕は肩から先が切断されたままであった。
治療はされているがそれでも万全とはかけ離れた具合である。
「刑事殿だってそんなことは分かった上でバケモンを引き受けたんだ!!
この坂道を下りきったら23区に着く!!お前も手伝えっ!!」
男警官はそう述べた後、群衆の誘導へと向かった。
(わたし達って弱いなぁ。……………。)
女警官は涙目になった黒い瞳で桜が行き去った道を見つめ、誘導へと向かった。
――――――――――――――――――――――
一面は畑に覆われ、24区へと通じる道路が一直線に伸びている
「でぇええいいい!!!」
そんな中に耳を指すような金属音が一つ響き渡る。
「ぐ……っ……!!!」
化け物の大爪に黒い警棒が震えながら接していた。
「っっあああああ!!!!」
爪、頭、喉元に重々しい打撃を繰り出すが、サーベルタイガーは微動だにしない。
「は――!!」
果敢に攻める桜をよそ目に、黒い尻尾が桜の体を捕縛する。
――グルルルルぅ……!!
そうして身動きを封じた人間相手に、化け物は右手を握るような仕草をしたあと、
「……!?」
ボクシングのようにパンチを繰り出した。
なんてことのないパンチ。だが、刑事はアスファルトにヒビを作りながら、水たまりが張った畑の中に転がり続けて行った。
(咄嗟に右腕でガードしたが……、頭に直撃したら脳みそが飛散したな……)
視界がボンヤリと滲みながら、泥水に揉まれて茶色くなったシャツを確認し、口に含んだ血を吐き捨てる。
「っちぃ!!?」
本能的に体を動かした。
先程立っていた地面は陥没し、煙の中から赤い瞳をもった化け物が迫ってきていた。
疲労か。恐怖か。桜は尻もちをついた。
不意に先の無い左肩を見る。
――悉くを燃やす炎【サンジョウ】
――数多を腐敗させる毒【ペルム】
――鉄のような冷たい氷【オルドビス】
(ここまで差があるなんてな。手も足もでねぇ……。
だが、あの赤い目はなんだ?あの赤い眼にはどんな意味が?)
粘りのある赤く黄色い牙が眼前に迫ってくるさなか、桜はそんな疑問を持った。
…………ぉぉぉぉぉ
なんだこの声は?
見つけたぞぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!
その青年は猛スピードで突っ込んできた後、その石のようにゴツゴツした拳でサーベルタイガーの顎を殴り飛ばした。
ガぁぁああ………!????
化け物は侮っていたのか情けない声で、だが確実に10メートルほどは引き下がっていた。
「47区でやり合って、急に走り出したかと思えば24区にいやがるとはなぁ!!!」
22:19
両手の骨を鳴らしは威風堂々と構えるはこの男【大窄カイ】夏ぶりの登場である。