其の八十二 サンジョウ

文字数 814文字

「クク…クハハハハハ……!!」

「………。」


メアリーとショウゾウ――その人間離れした戦闘を見守りあがら、犬神は桜の治療を行っていた。

徐々に顔色を良くなってきているが、頭部と切断された左腕の出血が酷く、予断を許さぬ状況であった。


「人間の身でありながら屈さぬとは……」
飽きれと敬意を表しながら、犬神は『早妃フミコ』へと目をやる。

雨に打たれながらフミコは、服についた土埃を落とすこともなく、

ただ――

ただ、マネキンのように無機質に戦う二人に瞳を移していた。

(こやつらの(におい)も……)

カツンと一歩進んだ。

(あり得ぬ――。それだけは認めてはならぬ――!!

……その結論は!!!)

犬神の考えに相槌を打つように、女は目を合わせて笑みを浮かべた。




「その程度が限界なら、おとなしく死んでもらうけど。」

「くははッ!まさか……今のはウォーミングアップだ。」


雨粒が次第に硬く強く激しく降り注ぐ。


「そうだ、ここからが本番だ……

力を貸せ――

。」


「サンジョウだと!?」
いち早く反応したのは犬神であった。
「メアリー逃げろ!!お前で、グぅぅ――!?」

少女に忠告しようと口を開いたが、突然の熱波により彼の喉が焼かれてしまう。





「人の楽しみを奪うのはワリィことだぜ?犬よ。」

「チぃ…!メアリー気を付けい!!」



男の足元から蒸気が噴出し始めた。

どうやら川が蒸発しているようだった。

さっきまで元気よく泳いでいた魚が、白い眼をしてプカプカと浮き上がってくる。



戦闘態勢らしき構えを男がとった。
「まずは、ジャブ程度にな。」


「!!――」


直後――1秒にも満たない僅かな間に、打ち上げ花火のような重低音が、

四発――鳴り響いた。





「ははハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
やるじゃねぇか!!
よく受けきったと褒めてやる!!!」

「これくらいじゃないと張り合い無いでしょ……!!」

両腕に焦げた跡があり、

1発は喰らったのか、額から血を流したメアリーの姿があった。




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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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