其の五十九 二人のOB

文字数 1,375文字

「ッ――、嗚呼ああ!!」
がぎんっと骨と鉄がぶつかる音が弾ける。
「しつっこいガキがああぁぁあ!!」

鉄パイプから赤い液体が滴り落ちる。

そのとき見た目からは想像できないほどのスピードでゲンジは
ソウマの懐に潜り込むと
「――ガッッ!?」
鮮やかに背負い投げを放って見せた。

ここは大人の特権といういうべきか
ソウマの体がギチギチと潰されていく。
「これでお前も終わりだな……!
手間かけさせやがって。」
そういって、ゲンジは鉄パイプを構えた。

「!?――」
頭に打ち込めばそれで終わりのはずだった。
しかしすこしの違和感に気をとられ振り下ろさなかったのである。
「あぁ!!が、があああああああッッ!!!!!」
ヤクザの体が徐々に、徐々に浮き始める。

ついに、少年の両手で持ち上げられる形になった。
「くそ!?こいつ!?いったいどこにこんな力が!?」
「ぞう、らあああ!!」
そして廃棄山に投げ飛ばした。

カンカンカンと金属音が鳴らして
廃棄山が崩れ落ちる。

「ヒュー、ひゅー……。」
そうとう体力をつかったのかソウマの呼吸音が普段と異なっている。

拳の皮はめくり上がり

腕は内出血で青あざだらけで、額を何度も拭ったせいで血まみれ。

特攻服もあちこちが擦り切れてる始末

視界が目まぐるしく揺れる中

背を付けないように、必死に膝をついて呼吸をする。


「てっめぇ……。
その怪我でここまで続けて――

なぜそこまで負けを認めねぇ!?」
がれきの山から同じようにボロボロのゲンジが
イラつきをぶつけるように怒鳴り散らす。

それを聞いたソウマは乾いた笑みを浮かべながらも
燃えるような熱い瞳をかたどる。
「――俺のダチ達が諦めずに戦ってるっていうのに、
俺だけ負けて良いはずないだろうがッ!!


俺は――!

俺は――この!37区隊の隊長だ!!

37区隊の『誇り』そのものだ!!

だから!負けてられるかッッ!!」


「泉隊長――」
隊長の言葉を受け、

地に倒れてるもの

敵に怯んでいる者

各々の隊員たちは魂を削る思いで立ち上がり始めた。



しかし、やはり大人と子供という
嫌でも体格やパワーの違いがでてしまう。

状況は暴力団組織が優勢である。

いくら勢いが乗ろうとも力の差に誤魔化しは効かない。

ズズんっと暴力団組織のボスはガレキの山から下りて
のっそりと隊長の下へ歩を進めた。


ブブぶぅぅぅうううん―――
ブウゥゥゥウン――!!


突如、何処からか大型車を思わせる排気音が響きだした。

「なんだぁ?増援か?」
ゲンジは辺りを見渡す。


そうして廃棄上の入口ゲートから二つの大型バイクが飛び出してきた。

「うおッ!あっぶね!?」
これはヤクザ側からかしても、そして学生軍団からしても想定外なことであった。

二つのバイクは両軍に威圧を掛けるように
エキゾーストを高鳴らしながら辺りをグルグルと周りを走り始めた。

「なにが目的だ?」
ゲンジは隊長であるソウマに聞いたが
ソウマ自身も分かっていないのか、ただただ二つのバイクを目で追っていた。



ある程度、走り回り気が済んだのか、
ずしゃりと足を地面におき
二台ともソウマの近くに停車した。

彼の左側にいるドライバーが黒いヘルメットとバイザー越しに一瞥している。
「それでこそ、あたしの右腕ね♡」
「!?――」

右側のドライバーもまた、彼に声を掛けた。
「ああ。ほうとうに、ここまで強くなってるなんてな。」

「せん、ぱい方――」

がこりと音をだして

ハチミツとスイはヘルメットを外した。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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