其の五 バカみたいな恋心
文字数 1,752文字
「どうしたらナオミは僕の所に来てくれるのでしょうか?」
勾配のキツイ上り坂を一歩一歩を味わって最中、脈絡も流れも無くヨウは口にした。
「遠足の中で一番大変なこの状況で、その話題をだすか…。」
一歩後ろにいる彼にオレは振り向きもせず返した。
「この状況で…!自分の色恋沙汰を話せるお前は…!変わりモンだよ…‼」
「あなたに変わり者とは言われたくないですね。」
腹立つ。前を見ればすぐに赤の他人たる学生が歩いてるというのに。しかも全然疲れていない。
「前に生徒はいますが、彼らも自分達の話で僕達の会話など聞いてはないでしょう。」
「そりゃそうだが…。」
確かにそうだけど、時と場合が全く嚙み合っていないから、落ち着いて話せないとは思うんだけどなー。
「お前がナオミを好きな事は良く分かっているよ。何度も聞いてはいるからな。」
「ええ、そうでしょうとも。何度も話しましたから。しかし進展は特にありません。」
塀を手のひらで触る。ザラザラとしてヒンヤリと冷たかった。
「ですから、あの海岸清掃の時は楽しかったです。多少は彼氏気分が味わえました。」
はにかみながらヨウは話す。
「ただ、前ばかり見ていて下を見ていないのですよ—彼女は。…だから湖水に落ちたんです。それも腰からバッシャーーンって。」
左に大きくカーブしている道を進み平坦な道が見えてきた。
「――だから見ておかないと僕が不安になるんです。」
「優しい人間だ、ヨウって。」
「まぁ僕の自己満足みたいなものなんですがね。」
遠くに目をやると畑が広がる区域が見えてきた。しかし、目的地はまだまだ先。まだ半分も歩いてはいない。あ、黒猫と会った店。
クイズ大会兼休息所についた。役員は考えてきたクイズで学生達を楽しませている。その光景から距離を置いてオレ達は静観していた。
影が差し込んでいる彼に、リュックから取り出したドリンクを押し付けた。
ヨウにドリンクを押し付けて、役員として黒猫と共に学生に説明をしているナオミを見つける。
「いい顔で笑ってるじゃない彼女。」
「……ええ、ずっと笑っていて欲しいものです。」
「そう思うよな。うんうん女の子は笑うが華だ。」
一息ついて分かり切ったことを聞く。
「どうして彼女のことが好きと思った?」
黒い瞳だけが向けられ、その後下に降りた。
「そ…うですね、色々ありますよ。話しているときとか勉強を教えてもらっているときとかお菓子食べたりするときとか−。」
笑みを浮かべながら次々と流暢に嚙むことなく繰り出される甘い話。
「なにより、何かあったら真っ先にメールをに送りたい人ですから。」
目的地まで四分の三を歩いた。左手には白い砂浜とキラキラとブルーな海が広がっている。
「−ッきっついわ~~。」
「そんなはしたない顔と声を出さないでくれますか。」
「ちょっとちょっと、声は分かるけど、顔って…」
目的地までもうちょいときたが、最後の最後にまたも上り坂が用意されていた。海も浜もこれ以上なく美しいものであるが(それ以外にこの島に取り柄がないため)、オレにそんなものに注意を向ける余裕は無かった。ここまでで約十キロを歩いたのだ。そろそろ腰を下ろしたい。歩くたびに足の裏側はジクジク痛くなるし、太陽は目を突き刺してくるし、一言でいえば最悪に尽きる。
「ってかなんなん?何でそんな疲れないん?」
「僕とあなたとは出来が違うのです。」
ふふんと鼻を鳴らして彼は言った。ちぇっと舌打ちをしてそっぽを向く。
「そもそも、役員は優れた生徒から選ばれた学校の大黒柱です。学力、スポーツ、様々な分野の中で秀でた人が揃うところなんですよ。……なんであなたいるんです?」
彼は問いかけた。アイロニーを感じるが、そこには確かに純粋さも混じっている素朴な疑問を。
「−−。ハッ!決まってっだろ。このオレが天才だからだ‼そうに決まっている!」
ヨウ−にはではなく海に向かって叫ぶように吐いた。……おーかなり響いちった☆。
くるりと向き直ると、ヨウは顔をしかめて耳をふさいでいた。そしてゆっくり手を下ろしながら近づいてきた。
「あ、あなたって人は~~ッ」
げッやばい怒ってる…。ここは逃げ−−。
「周りに気を遣いなさいッッ!」
鈍痛な音が肉体に響いた
勾配のキツイ上り坂を一歩一歩を味わって最中、脈絡も流れも無くヨウは口にした。
「遠足の中で一番大変なこの状況で、その話題をだすか…。」
一歩後ろにいる彼にオレは振り向きもせず返した。
「この状況で…!自分の色恋沙汰を話せるお前は…!変わりモンだよ…‼」
「あなたに変わり者とは言われたくないですね。」
腹立つ。前を見ればすぐに赤の他人たる学生が歩いてるというのに。しかも全然疲れていない。
「前に生徒はいますが、彼らも自分達の話で僕達の会話など聞いてはないでしょう。」
「そりゃそうだが…。」
確かにそうだけど、時と場合が全く嚙み合っていないから、落ち着いて話せないとは思うんだけどなー。
「お前がナオミを好きな事は良く分かっているよ。何度も聞いてはいるからな。」
「ええ、そうでしょうとも。何度も話しましたから。しかし進展は特にありません。」
塀を手のひらで触る。ザラザラとしてヒンヤリと冷たかった。
「ですから、あの海岸清掃の時は楽しかったです。多少は彼氏気分が味わえました。」
はにかみながらヨウは話す。
「ただ、前ばかり見ていて下を見ていないのですよ—彼女は。…だから湖水に落ちたんです。それも腰からバッシャーーンって。」
左に大きくカーブしている道を進み平坦な道が見えてきた。
「――だから見ておかないと僕が不安になるんです。」
「優しい人間だ、ヨウって。」
「まぁ僕の自己満足みたいなものなんですがね。」
遠くに目をやると畑が広がる区域が見えてきた。しかし、目的地はまだまだ先。まだ半分も歩いてはいない。あ、黒猫と会った店。
クイズ大会兼休息所についた。役員は考えてきたクイズで学生達を楽しませている。その光景から距離を置いてオレ達は静観していた。
影が差し込んでいる彼に、リュックから取り出したドリンクを押し付けた。
ヨウにドリンクを押し付けて、役員として黒猫と共に学生に説明をしているナオミを見つける。
「いい顔で笑ってるじゃない彼女。」
「……ええ、ずっと笑っていて欲しいものです。」
「そう思うよな。うんうん女の子は笑うが華だ。」
一息ついて分かり切ったことを聞く。
「どうして彼女のことが好きと思った?」
黒い瞳だけが向けられ、その後下に降りた。
「そ…うですね、色々ありますよ。話しているときとか勉強を教えてもらっているときとかお菓子食べたりするときとか−。」
笑みを浮かべながら次々と流暢に嚙むことなく繰り出される甘い話。
「なにより、何かあったら真っ先にメールをに送りたい人ですから。」
目的地まで四分の三を歩いた。左手には白い砂浜とキラキラとブルーな海が広がっている。
「−ッきっついわ~~。」
「そんなはしたない顔と声を出さないでくれますか。」
「ちょっとちょっと、声は分かるけど、顔って…」
目的地までもうちょいときたが、最後の最後にまたも上り坂が用意されていた。海も浜もこれ以上なく美しいものであるが(それ以外にこの島に取り柄がないため)、オレにそんなものに注意を向ける余裕は無かった。ここまでで約十キロを歩いたのだ。そろそろ腰を下ろしたい。歩くたびに足の裏側はジクジク痛くなるし、太陽は目を突き刺してくるし、一言でいえば最悪に尽きる。
「ってかなんなん?何でそんな疲れないん?」
「僕とあなたとは出来が違うのです。」
ふふんと鼻を鳴らして彼は言った。ちぇっと舌打ちをしてそっぽを向く。
「そもそも、役員は優れた生徒から選ばれた学校の大黒柱です。学力、スポーツ、様々な分野の中で秀でた人が揃うところなんですよ。……なんであなたいるんです?」
彼は問いかけた。アイロニーを感じるが、そこには確かに純粋さも混じっている素朴な疑問を。
「−−。ハッ!決まってっだろ。このオレが天才だからだ‼そうに決まっている!」
ヨウ−にはではなく海に向かって叫ぶように吐いた。……おーかなり響いちった☆。
くるりと向き直ると、ヨウは顔をしかめて耳をふさいでいた。そしてゆっくり手を下ろしながら近づいてきた。
「あ、あなたって人は~~ッ」
げッやばい怒ってる…。ここは逃げ−−。
「周りに気を遣いなさいッッ!」
鈍痛な音が肉体に響いた