其の五十七 USBの意図

文字数 1,078文字

「忠告したよな?

 ここは俺たちの縄張りってよ。

 たしかにそう言ったな?

 イズミ。」


 「誰がどこを縄張りとし、どこを走ろうとも、

 自由だろ?

 縛り付けるんなら、力で従わせてみろ。

 ゲンジさんよぅ?」




 学生軍団 63人

 暴力団  50人


それらを率いる二人が、真正面から言葉で切り合っていた。

暴力団側は、鉄パイプ、メリケンサック、など各々の武器を所持している。
学生は誰も武器らしきものは手に持っていなかった。

「ガキはもう寝る時間だ。

――再教育してやるよ。

命知らずどもが――!!」


「死ぬのが怖くて、バカができるかよ……!」
一触即発の空気感の中、泉ソウマは頭上で大旗をグルグルと回し始めた。

 一方的な殺意も

 怯えた面持ちも

 この先がどうなるか期待する笑みも

 すべて等しく均等に、かき混ぜていく。



 ドスンと旗が地面に突き刺さった。


 風は止み、波は凪へと静まり返る。




ぜんいんッッ!突撃いいぃぃぃぃぃ!!!!!!

お互いがお互いに、鼓舞ともとれるような威圧を掛け合い、中央へ駆けだした。





(ほ、ほんとに、おっぱじめやがった!?
しにたいのかあいつ!?
……
………

こっわ……、こんなことならおとなしく寝とけばよかったぜ……)

後悔はしつつも、先の展開が気になるのか
川原ケンジは一歩も動かず、目を固定させていた。









24区 職員室

「な、なんでこんな物があるのよ……」

ナオミはUSBを気にしつつも、教員机を漁っている千流に問いかける。

「わからん。儂がここへ来たときから机の真ん中に置かれておった。」
「ダメですね。もっと専用の機械がなければ内部を探れません。」
スマホを見ながら、メアリーがため息混じりに報告する。

室内に、ガタゴトと物を漁る音だけが木霊する。

ナオミは状況を把握しきれず口をパクパクさせている。
メアリーはなんとか探れないかとスマホをタップし続ける。


「ねぇ、千流はさっきから何やってるの……?」
しびれをきらしたナオミは、散らかった教材を束ねながら言う。

「できすぎとる。」
机の上でぺたぺたと足音を鳴らしながら彼女と向き直る。

「どういうこと……?」
「言ったな。それは机の真ん中に置いてあったと。
冷夏事件と関連のある人物がわざわざ、目立つ場所に置く必要があるのか?」
千流は真っ赤なUSBを指をさす。

「そして、この机の教材をあらかた調べたが、名前がどこにも記されておらん。
職員の名簿も抜き取られておる……」

「なによ、それって、

っていいたいの?」
千流は無言で頷き、USBを手に取った。

「ナオミといったな。
次の区へ案内しろ。

これ以上、犠牲者を出したくなかったらな。」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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