其の四十四 24区商業高校 諫早ナナと有喜ミナコ

文字数 1,604文字

 24区商業高校――通称24区校。
 坂の上に建設されているため、島全貌を見渡せるようになっている。
 吉田たちの通う25区高校――25区校とはカリキュラムが異なり、こちらは進学より就職を重視している。
 よって学校の時間割もことなり、一時間目は8時50分となっている。(25区校は7時30分に朝補習が開始。)


 …………
 …………………


 「……。」
 ここに一人の少女がスマホを凝視している。
 LINEのトーク画面が開きっぱなしで、真っ白なバーに黒いキーがチカチカと表れては消えている。
 ――昼休み。
 弁当は食べ終わり、歯磨きを終えて歯を白くした――が彼女の淀みが消えることはついぞ無い。
 「ナナ、購買いこうぜ――」
 「ひゃああ!?ちょっとミナコ!その呼び方はやめてって言ってるでしょ!!」
 びくりと体を震わせた後、美奈子の顔にビンタをかました。
 ナナは、彼女が顎を乗せた鎖骨と、息を吹きかけられた左耳をさする。
 「そう言われてもな。ナナの鎖骨と耳を見てると、体がムズムズしちゃって我慢きかねえんだわ。」
 ミナコと呼ばれた女子生徒は、ビンタされた左頬を、人差し指と中指でツウウゥゥ――となぞってぶっきらぼうに答えた。
 この痛みはナナからの贈り物……!
 うわぁ、いつからそんなんになっちゃったの。


 「あめやど、すい、って書いてたよな。」
 「……」
 一階の購買部に向かうために、階段を下りてる途中にミナコは口を開いた。
 「聞いたことねぇんだよなー、そんな名前。」
 「ミナコには関係ないわよ。ただの先輩。」
 ダンっと三段とばしてミナコは着地した。
 真昼の日光が差し込むなか彼女は、ナナに指をさして断言した。
 「男だろ?」
 「…………」
 ナナは見下し気味で、銀色の手すりに目を落とした。


 はい、まいど。
 サンキュウ!おばちゃん!『トミエ』製のパン美味くってたまんねぇんだよ!また明日くるわ!!
 うれしいねぇ。まってるよぉ。


 「あんた、弁当食べたんでしょ。よく食べれるわね。」
 ピザパンを貪るミナコをみながら、胸やけを覚えるのかナナは胸をさする。
 「はぁ!?おかしなことを言うんじゃないよ!」
 パンを6口で食べきって、油でつやつやになった口元をブレザーで拭いながら、彼女はまたもや指をさす。
 「せっかく女子高生っていう究極高級品(アルティメットブランド)になったんだぜ!?この時期に食べとかないと

!!」
 「おおきく……?」
 ドンとミナコは己の胸を叩く。
 「おっぱいよ!!!」
 ナナは眩暈を起こしそうになる。
 「うっぷ、高校卒業までにあたしはEカップになるのさ。そんでもって世の男たちをオフらせるのよ。それがあたしの夢なのさ☆」
 パチーんとウインクを決める。
 「釣り餌は大きいほうが、良い獲物が釣れるってものよ。うっぷ。ナナも……女だったら分かるでしょ?」
 (いや、ミナコあなたもうCはあるじゃない。)
 やばッ、食べすぎたかも……。
 えづく、ミナコを目に収めながらナナは漠然とした虚無に駆られる。
 「そんな顔はしても、体は正直ね。」
 「――!?」
 とっさに胸をさすっていた手を腰の後ろへとナナは隠した。
 「違うわよ!!これは……胸やけっぽくて――」
 「ほんとうかしらぁ、なら

?」
 さっきのガサツな言動から一変して、女のとろみをだしてミナコは、彼女の鎖骨に乗っかって言葉を発する。
 「胸の小さい女は、背の小さい男とおんなじよぉ。」
 「それは失礼だと思うけど。」


 ごふごふっ、むせた、げほ、げほ。
 小僧、ちゃんと綺麗に掃除しろよ。
 わかって……、クソッ、げほ、メッチャ引っ掛かった――


 「さぁ行くわよ。午後の授業が始まっちゃう。」
 「アーー疲れた、ナナぁぁ~手を繋いでくれぇぇ」
 「自分で歩きなさい。」
 ミナコの情けない言葉が響く。
 「悪かったって~~、今日の文化祭の準備あたしも手伝うからあぁぁ~~」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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