其の九 遠足(転句)
文字数 2,075文字
「それは災難な目にあったわねぇ。」
「普通卵焼きにハバネロ混ぜ込むか⁉って話だよ。」
カズミと別れた後、吉田は一人でティータイムを嗜んでいたハチミツと合流していた。
「はい、イチゴアメね。」
「ん、…あひがと。」
辛いモノで口のなかが大変なことになっていたため、甘いもので相殺しようという考えを吉田は持っていた。ハチミツを探していたのもそのためである。
「それで、なぜこんなところに一人でいる?。」
「あら、おかしいかしら。こうして一人で茶を楽しむことは、風情を感じられていいものよ。」
そういってカップの中のモノをズズゥーっと飲み干した。
「ねぇミョウ、あなたあの海岸清掃の後どこに行ってたのよ。」
アメをガリガリとかみ砕きながら言う。
「カズミん所に行ってた。」
まぁ⁉とさながら夫人の様にハチミツは口に手を押さえる。
「あの子ったらまだ練習しての⁉」
「やってたよ、やってたやってた。」
「……そう。うんやっぱり私あの子好きだわぁ。」
目をキラキラと輝かせる。
「しかしミョウもミョウね。わざわざ面倒見に行くなんて。不審がられなかった?」
「そこら辺はちゃんと言いくるめたよ。純白な女の子なんだ信じてくれたよ」
ハチミツは神妙な顔をした。
「それがオレの仕事だからな。」
取ってつけたように付け加える。
「特別措置者—ずいぶんと大層な席に座ったものね。」
「不満はないぜ。カッコいいだろ?」
「あんたぐらいよ。そんな事を言うのは。」
吉田はハチミツのティーセットを勝手に使う。
「ちょっとそれ私のなんだけど…!」
「そう硬いこというなよ。一人で飲むのも悪くはないと思うけどさ……。」
コポコポとカップに注ぐ。
「味について語り合うってのも風情があると思うよ。」
そういって吉田は涼やかな顔をして口を付けた。
「あっっづぃ!!!」
熱い茶をふーふーと息をかけながら、吉田は先ほどのカズミとの下りもぺらりと話した。
「それは…ミョウが悪いわ。」
きっぱりと断言された。
「あぁ…やっぱり……?」
当然よ、と前振りをして、
「もう感づいてたんでしょ?それを確信を得るためだからと言って…ねぇ?。意地悪したってもんよ。」
たしなめるように吉田を一瞥(いちべつ)してカタンとカップを置く。
吉田もまたガリガリと頭を掻いてカップを置く。
「マジかぁ…。分かったよ…。謝ればいいんでしょ謝れば……。」
はぁとため息をつく。
「そうよ。ちゃんと『ごめんなさい』ってね。」
ギクリと吉田の体が反応した。
「……すまないとかじゃダメ?」
「だ・め・よ‼謝罪するなら『ごめんなさい』が一番気持ちが入るんだからね!。『すまん』『すまない』なんて邪道以外なにものでもないわ。」
ズんっとハチミツの顔が迫ってきていたため、吉田は思わずのけぞった。
「それとも…プライドが邪魔して言えないってことじゃないでしょうねぇ~~!。」
背中がつりそうなくらいのけぞったため、吉田は一歩後退した。
「わかったよ‼言えばいいんだろ言えば……!」
フゥーとため息の次は嘆息(たんそく)した。
「分かればいいのよ分かれば☆」
(どうしてこう『女』ってものは恐ろしいんだろ……。)
釘をさされまくった吉田はハチミツに礼を言って別れた。
「自らの非を認めて謝る」、園児でも分かるほど簡単で、大人になるほど難題なもの。吉田にとっては難題ものに区別されていた。
「……。」
虚を見つめて歩いているさなか、ヨウとばったり出くわす。
「ん、ヨウか。」
「吉田…でしたか。」
ばったり出くわしたため、その反応に困ったが、ヨウはあたりきょろきょろしておりなにかを探している感じに見られた。それもどこか焦りの表情も見られる。
「?。どうした。」
「ええ……。ナオミさんを見ました?」
「いや、見てはいないが。」
「では…大窄カイは?」
「………‼」
風が強く吹いた。マントのように羽織っている学ランがバサバサと音を出す。
「…アイツは一目見れば分かるほどの大柄です。見逃したという可能性はありません……!」
嫌な予感が二人を金縛りさせていたところに、黒く小さい物体が生徒たちの足元を縫うように吉田達との元にやってきた。
「−−ハッ、ゴホッ、小僧たちッッ!小娘がッ大浜の娘がッ−−。」
「−−ッ、どうしたんだ‼ラックっ!あの人に何かあったのかッッ!」
いち早く動いたのはヨウだった。しかしその動きに冷静さは見られない。
吉田は片膝をつき、ラックの乱れた毛の部分に手をそっと置いた。
「吉田こぞ−−」
「落ち着け。質問をする。大浜ナオミに何があった?」
一つ一つの言葉を地に付けて問いかけた。
「……。大浜の娘が暴君とやらの男に襲われた…!。」
「そうか。その二人はいまどこにいる?」
「下の浜辺に。」
立ち上がると同時に吉田は、今にも飛び出しそうなヨウを制止させた。
「なぜっ!早くいかないと‼」
「冷静さを欠けば、状況を悪化させるだけだ。」
ヨウは言葉に詰まった。
一呼吸をおき吉田は発破をかけた。
「行くぞ…‼」
「普通卵焼きにハバネロ混ぜ込むか⁉って話だよ。」
カズミと別れた後、吉田は一人でティータイムを嗜んでいたハチミツと合流していた。
「はい、イチゴアメね。」
「ん、…あひがと。」
辛いモノで口のなかが大変なことになっていたため、甘いもので相殺しようという考えを吉田は持っていた。ハチミツを探していたのもそのためである。
「それで、なぜこんなところに一人でいる?。」
「あら、おかしいかしら。こうして一人で茶を楽しむことは、風情を感じられていいものよ。」
そういってカップの中のモノをズズゥーっと飲み干した。
「ねぇミョウ、あなたあの海岸清掃の後どこに行ってたのよ。」
アメをガリガリとかみ砕きながら言う。
「カズミん所に行ってた。」
まぁ⁉とさながら夫人の様にハチミツは口に手を押さえる。
「あの子ったらまだ練習しての⁉」
「やってたよ、やってたやってた。」
「……そう。うんやっぱり私あの子好きだわぁ。」
目をキラキラと輝かせる。
「しかしミョウもミョウね。わざわざ面倒見に行くなんて。不審がられなかった?」
「そこら辺はちゃんと言いくるめたよ。純白な女の子なんだ信じてくれたよ」
ハチミツは神妙な顔をした。
「それがオレの仕事だからな。」
取ってつけたように付け加える。
「特別措置者—ずいぶんと大層な席に座ったものね。」
「不満はないぜ。カッコいいだろ?」
「あんたぐらいよ。そんな事を言うのは。」
吉田はハチミツのティーセットを勝手に使う。
「ちょっとそれ私のなんだけど…!」
「そう硬いこというなよ。一人で飲むのも悪くはないと思うけどさ……。」
コポコポとカップに注ぐ。
「味について語り合うってのも風情があると思うよ。」
そういって吉田は涼やかな顔をして口を付けた。
「あっっづぃ!!!」
熱い茶をふーふーと息をかけながら、吉田は先ほどのカズミとの下りもぺらりと話した。
「それは…ミョウが悪いわ。」
きっぱりと断言された。
「あぁ…やっぱり……?」
当然よ、と前振りをして、
「もう感づいてたんでしょ?それを確信を得るためだからと言って…ねぇ?。意地悪したってもんよ。」
たしなめるように吉田を一瞥(いちべつ)してカタンとカップを置く。
吉田もまたガリガリと頭を掻いてカップを置く。
「マジかぁ…。分かったよ…。謝ればいいんでしょ謝れば……。」
はぁとため息をつく。
「そうよ。ちゃんと『ごめんなさい』ってね。」
ギクリと吉田の体が反応した。
「……すまないとかじゃダメ?」
「だ・め・よ‼謝罪するなら『ごめんなさい』が一番気持ちが入るんだからね!。『すまん』『すまない』なんて邪道以外なにものでもないわ。」
ズんっとハチミツの顔が迫ってきていたため、吉田は思わずのけぞった。
「それとも…プライドが邪魔して言えないってことじゃないでしょうねぇ~~!。」
背中がつりそうなくらいのけぞったため、吉田は一歩後退した。
「わかったよ‼言えばいいんだろ言えば……!」
フゥーとため息の次は嘆息(たんそく)した。
「分かればいいのよ分かれば☆」
(どうしてこう『女』ってものは恐ろしいんだろ……。)
釘をさされまくった吉田はハチミツに礼を言って別れた。
「自らの非を認めて謝る」、園児でも分かるほど簡単で、大人になるほど難題なもの。吉田にとっては難題ものに区別されていた。
「……。」
虚を見つめて歩いているさなか、ヨウとばったり出くわす。
「ん、ヨウか。」
「吉田…でしたか。」
ばったり出くわしたため、その反応に困ったが、ヨウはあたりきょろきょろしておりなにかを探している感じに見られた。それもどこか焦りの表情も見られる。
「?。どうした。」
「ええ……。ナオミさんを見ました?」
「いや、見てはいないが。」
「では…大窄カイは?」
「………‼」
風が強く吹いた。マントのように羽織っている学ランがバサバサと音を出す。
「…アイツは一目見れば分かるほどの大柄です。見逃したという可能性はありません……!」
嫌な予感が二人を金縛りさせていたところに、黒く小さい物体が生徒たちの足元を縫うように吉田達との元にやってきた。
「−−ハッ、ゴホッ、小僧たちッッ!小娘がッ大浜の娘がッ−−。」
「−−ッ、どうしたんだ‼ラックっ!あの人に何かあったのかッッ!」
いち早く動いたのはヨウだった。しかしその動きに冷静さは見られない。
吉田は片膝をつき、ラックの乱れた毛の部分に手をそっと置いた。
「吉田こぞ−−」
「落ち着け。質問をする。大浜ナオミに何があった?」
一つ一つの言葉を地に付けて問いかけた。
「……。大浜の娘が暴君とやらの男に襲われた…!。」
「そうか。その二人はいまどこにいる?」
「下の浜辺に。」
立ち上がると同時に吉田は、今にも飛び出しそうなヨウを制止させた。
「なぜっ!早くいかないと‼」
「冷静さを欠けば、状況を悪化させるだけだ。」
ヨウは言葉に詰まった。
一呼吸をおき吉田は発破をかけた。
「行くぞ…‼」