其の百三十九 結果がすべてじゃない。世界は過程に興味ないけど
文字数 2,032文字
【高校生のお前たちには酷なことを言うが、結果が出らんば努力の価値はなかとぞ。】
まだ学校で部活をやっていたときに、よく言われた言葉だった。
世間は努力やその過程を考慮しない。勝敗、成績、その結果だけで判断すると。
当時は違和感なく聞けていたが、学校を休んだ時から引っ掛かり始めた。
よく【努力してえらいね。】とか【コツコツやれてる努力家】と褒められてきたが、それとは真逆のことである。
結果
結果結果
結果結果結果
そんな極端なことは【優しい】人ならしないだろうって、そのときは思ってた。
【でも結果だけしか世界は興味ないぜ☆
そりゃあれよ――大学受験で一番の決め手となるのって、得点っていう結果じゃん☆
努力していましたっていう低い人より、得点の高いサボりマンが合格になるでしょ??】
吉田ミョウに言われた言葉だった。
6月――吉田を殴った時期にそう言われた。
癪だった。
自分より身分が低くって、頭の悪そうな中二病が、自分の見えなかったことをいった。
それが気に食わなかった。
それが私を二つに裂いた。
努力が大事!!努力すれば報われる!!いろんな人が自分を認めてくれる。
たとえ最初は独りだけだとしても。
最終的には、みんなから慕われるようになる!!!
『それで1人 家の留守番とは笑える話ね。』
カツンっと魚の頭をナイフが切り落とす。
だけど、現実は過程に興味はないらしかった。
どれだけのものを捨てても。
人間を虫に見るような醜悪の心に至っても。
先輩や幼馴染を殴るという悪人になっても。
救いの手はなかった。ただ期待して終わっただけだった。
そこから私は、私たらしめる要素を失っていった。
母国語である日本語すら【読むことができなくなり】、部活であるバレーには勝つことに【疑問】を持ってしまった。
一度失うと、一度その感覚を知ってしまうと、もう以前のようにはいかない。
脳がシャットダウンしているのか、あんぐりと大きな口を開けて、私を眠りにつかせようとしてくる。
【殺されんば分らんとや!!??】【バレー部の役立たず、恥さらし。】
パイプ椅子やボールを投げつけられ暴言を吐かれ、それで【県大会ベスト4】とかになって、なんの得があるのだろう。
『………。』
残ったのは【ワンマン】させられて、抉り取られたような、手の火傷だった。
痛みだった。
努力して、物語の主人公みたいに慕われようとした結果、
『……っ――』
得体の知れない不吉な塊が、心臓を、止めようと押さえつける痛みだけが残った。
誰も、私を理解してくれようとする人もいなくなった。
私が甘い理想を、この現実にはめようとしたから。
私が求められるような、良い人を演じようとしたから。(自分の不本意で)
私が優秀な人になって、親孝行しようとしたから。(私の気持ちを抑えて)
私が、自分は正しいと、疑わなかったから。(謙虚さという意味?ではない?)
【三尾アヤカ――いつから君は、自分だけが関係無いと思っている?
君が、私 たちをどう思おうと、とやかくは言わない。
だけど、人間として生まれた以上、君は【花】だ。男を楽しませる花の一輪だ。
君の嫌いな害虫を増やす、その最もたる存在 だよ。】
『……ッぇ――』
自分の体内にあるような、甘いミツを、苦い人間感情を、吐き出そうとえずく。
(リストカットは人の目に見えるため。)
吐きたい。自分のこの汚い思考を吐きたい。もう一度、昔の私に戻りたい。
知りたくなかった。
知らなければ、私が、この私が、ここまで苦しむ必要が無かったのに。(人一番努力してきた自分が、どうしてそこらへんで遊んでいる凡人以上に、苦しまねばならない?)
【でも女の子って凄いじゃん!!自分の体で生命を作るんだよ!?すごない!?【神】より神様してるよ☆】
吉田の言葉が、まるでこうなるようになることを知ってきたように、次々に思い出される。(なぜか顔はボヤボヤになってるけど)
でも、子供をつくるってことは、
【自分の【欲】を許容する強さを持ちなさい。
欲をすてた生き方なんてロボットそのものよ。】
吐きかけの吐しゃ物を飲み込む。
喉に引っ掛かる様な凹凸を、両手で口をふさいで胃に送り返す。
『2人して、私を誘ってるのかしら……。
吉田ミョウってもういないんだっけ。
あの人どうして生徒会にいるのか疑問だったけど、もしかして【こういうこと】の答え、もう知ってるのかな。
本当は、人が考えないような深いところを全部知っていて、わざとバカな人間を演じてたり――。
まさか、ね。舞台でもあるまいし。脚本だなんて。』
切断した魚の頭を三角コーナーに捨て、材料を冷蔵庫に入れる。
『そういえば、宮城さん昼頃どこにいってるんだろ。いっしょに昼ご飯食べたかったのに。』
………。
-―――――――――――-―――――――――――
ピンポンっと玄関のチャイムが鳴った
迷走してクラクラする頭を支えながら、玄関を開ける。
『あの、誰ですか……?』
頭部を剥げ散らかした小太りの男は、ギトギトした声で発する。
『君の、あ、あ、新しい、ご主人さまだよお……!!』
まだ学校で部活をやっていたときに、よく言われた言葉だった。
世間は努力やその過程を考慮しない。勝敗、成績、その結果だけで判断すると。
当時は違和感なく聞けていたが、学校を休んだ時から引っ掛かり始めた。
よく【努力してえらいね。】とか【コツコツやれてる努力家】と褒められてきたが、それとは真逆のことである。
結果
結果結果
結果結果結果
そんな極端なことは【優しい】人ならしないだろうって、そのときは思ってた。
【でも結果だけしか世界は興味ないぜ☆
そりゃあれよ――大学受験で一番の決め手となるのって、得点っていう結果じゃん☆
努力していましたっていう低い人より、得点の高いサボりマンが合格になるでしょ??】
吉田ミョウに言われた言葉だった。
6月――吉田を殴った時期にそう言われた。
癪だった。
自分より身分が低くって、頭の悪そうな中二病が、自分の見えなかったことをいった。
それが気に食わなかった。
それが私を二つに裂いた。
努力が大事!!努力すれば報われる!!いろんな人が自分を認めてくれる。
たとえ最初は独りだけだとしても。
最終的には、みんなから慕われるようになる!!!
『それで1人 家の留守番とは笑える話ね。』
カツンっと魚の頭をナイフが切り落とす。
だけど、現実は過程に興味はないらしかった。
どれだけのものを捨てても。
人間を虫に見るような醜悪の心に至っても。
先輩や幼馴染を殴るという悪人になっても。
救いの手はなかった。ただ期待して終わっただけだった。
そこから私は、私たらしめる要素を失っていった。
母国語である日本語すら【読むことができなくなり】、部活であるバレーには勝つことに【疑問】を持ってしまった。
一度失うと、一度その感覚を知ってしまうと、もう以前のようにはいかない。
脳がシャットダウンしているのか、あんぐりと大きな口を開けて、私を眠りにつかせようとしてくる。
【殺されんば分らんとや!!??】【バレー部の役立たず、恥さらし。】
パイプ椅子やボールを投げつけられ暴言を吐かれ、それで【県大会ベスト4】とかになって、なんの得があるのだろう。
『………。』
残ったのは【ワンマン】させられて、抉り取られたような、手の火傷だった。
痛みだった。
努力して、物語の主人公みたいに慕われようとした結果、
『……っ――』
得体の知れない不吉な塊が、心臓を、止めようと押さえつける痛みだけが残った。
誰も、私を理解してくれようとする人もいなくなった。
私が甘い理想を、この現実にはめようとしたから。
私が求められるような、良い人を演じようとしたから。(自分の不本意で)
私が優秀な人になって、親孝行しようとしたから。(私の気持ちを抑えて)
私が、自分は正しいと、疑わなかったから。(謙虚さという意味?ではない?)
【三尾アヤカ――いつから君は、自分だけが関係無いと思っている?
君が、
だけど、人間として生まれた以上、君は【花】だ。男を楽しませる花の一輪だ。
君の嫌いな害虫を増やす、その最もたる
『……ッぇ――』
自分の体内にあるような、甘いミツを、苦い人間感情を、吐き出そうとえずく。
(リストカットは人の目に見えるため。)
吐きたい。自分のこの汚い思考を吐きたい。もう一度、昔の私に戻りたい。
知りたくなかった。
知らなければ、私が、この私が、ここまで苦しむ必要が無かったのに。(人一番努力してきた自分が、どうしてそこらへんで遊んでいる凡人以上に、苦しまねばならない?)
【でも女の子って凄いじゃん!!自分の体で生命を作るんだよ!?すごない!?【神】より神様してるよ☆】
吉田の言葉が、まるでこうなるようになることを知ってきたように、次々に思い出される。(なぜか顔はボヤボヤになってるけど)
でも、子供をつくるってことは、
【自分の【欲】を許容する強さを持ちなさい。
欲をすてた生き方なんてロボットそのものよ。】
吐きかけの吐しゃ物を飲み込む。
喉に引っ掛かる様な凹凸を、両手で口をふさいで胃に送り返す。
『2人して、私を誘ってるのかしら……。
吉田ミョウってもういないんだっけ。
あの人どうして生徒会にいるのか疑問だったけど、もしかして【こういうこと】の答え、もう知ってるのかな。
本当は、人が考えないような深いところを全部知っていて、わざとバカな人間を演じてたり――。
まさか、ね。舞台でもあるまいし。脚本だなんて。』
切断した魚の頭を三角コーナーに捨て、材料を冷蔵庫に入れる。
『そういえば、宮城さん昼頃どこにいってるんだろ。いっしょに昼ご飯食べたかったのに。』
………。
-―――――――――――-―――――――――――
ピンポンっと玄関のチャイムが鳴った
迷走してクラクラする頭を支えながら、玄関を開ける。
『あの、誰ですか……?』
頭部を剥げ散らかした小太りの男は、ギトギトした声で発する。
『君の、あ、あ、新しい、ご主人さまだよお……!!』