其の八 早妃カズミの疑念
文字数 980文字
激辛好きのスイにより口に大ダメージを受けた吉田は、あっちこっちへと徘徊をしていた。そこへどこからか歩いてきたカズミを発見し、吉田はルンルンと歩を進めて近づいていった。
「お~い、カズミよー。」
近所のおじさんの如く、声を気だるげに出して呼び止める。
「そうだな…この辺にハチミツを見なかったか?」
軽い感じの吉田に対し、カズミの表情は仮面を付けているかのようにぎこちない笑顔をしていた。
「ハチミツ先輩ですか?それなら向こうの左手にいましたよ。」
「あっちかよ…。あぁ歩きたくねぇなぁぁ…。」
場所を把握した吉田は落胆のため息を吐きながらその場でしゃがみ込んでしまった。カズミがどうしたらよいのかと、挙動不審に顔をふるふると動かしていると、不意に吉田は立ち上がりグイィーと体を伸ばし始めた。
「行くしかないかぁ…」
そういって「ありがと」と小さく礼をして吉田はカズミの元を去ろうとした。
「ところで、貴様何か知ったか?」
カズミの表情が強張る。
「どうした?知らないならそういえば良いでしょうに?」
何かを言おうとカズミは口を動かすが、鯉のように口をパクパクすることが出来なかった。
「いえ……べ…つに、なにも…」
「高台から歩いてきてたよな。シンもいなかったし……?」
吉田は試すような目つきでカズミを睨んだ。それは彼女を怯ませるのに十分だった。
「「………。」」
冷たい空気の中二人は何も言わなかった。ツゥゥーっと背中に冷たい汗が流れていくのを感じた。
「−−っハ!はははははは‼」
風船が破裂したように吉田が高笑いし始めたため、次は何が起こるのかとカズミは身構える。
「−−っまさか、そんなにガチで付き合ってくれるとは思わなかったからさー堪え切れずに笑っちゃったよ。」
「……はぁ?」
ひとしきり笑った後は吉田はサラリと説明した。
「昨日見た映画でさ、犯人のアリバイが崩れるシーンを見てさやってみたくなっちゃってさー、行ってみたかったんだ☆」
可愛い感じに収めようとしたが、カズミの拳はワナワナと震えていた。
「−−ッ悪趣味ですね…!二度とやらないでください……‼」
純粋な怒りが彼女には起きていた。それ故か去り際の言葉はいつもより低音になっていた。
「……。」
吉田は彼女の背中を見ながら、頭をガリガリと首を傾げながら掻いた。
「やはり知っていたか。」
「お~い、カズミよー。」
近所のおじさんの如く、声を気だるげに出して呼び止める。
「そうだな…この辺にハチミツを見なかったか?」
軽い感じの吉田に対し、カズミの表情は仮面を付けているかのようにぎこちない笑顔をしていた。
「ハチミツ先輩ですか?それなら向こうの左手にいましたよ。」
「あっちかよ…。あぁ歩きたくねぇなぁぁ…。」
場所を把握した吉田は落胆のため息を吐きながらその場でしゃがみ込んでしまった。カズミがどうしたらよいのかと、挙動不審に顔をふるふると動かしていると、不意に吉田は立ち上がりグイィーと体を伸ばし始めた。
「行くしかないかぁ…」
そういって「ありがと」と小さく礼をして吉田はカズミの元を去ろうとした。
「ところで、貴様何か知ったか?」
カズミの表情が強張る。
「どうした?知らないならそういえば良いでしょうに?」
何かを言おうとカズミは口を動かすが、鯉のように口をパクパクすることが出来なかった。
「いえ……べ…つに、なにも…」
「高台から歩いてきてたよな。シンもいなかったし……?」
吉田は試すような目つきでカズミを睨んだ。それは彼女を怯ませるのに十分だった。
「「………。」」
冷たい空気の中二人は何も言わなかった。ツゥゥーっと背中に冷たい汗が流れていくのを感じた。
「−−っハ!はははははは‼」
風船が破裂したように吉田が高笑いし始めたため、次は何が起こるのかとカズミは身構える。
「−−っまさか、そんなにガチで付き合ってくれるとは思わなかったからさー堪え切れずに笑っちゃったよ。」
「……はぁ?」
ひとしきり笑った後は吉田はサラリと説明した。
「昨日見た映画でさ、犯人のアリバイが崩れるシーンを見てさやってみたくなっちゃってさー、行ってみたかったんだ☆」
可愛い感じに収めようとしたが、カズミの拳はワナワナと震えていた。
「−−ッ悪趣味ですね…!二度とやらないでください……‼」
純粋な怒りが彼女には起きていた。それ故か去り際の言葉はいつもより低音になっていた。
「……。」
吉田は彼女の背中を見ながら、頭をガリガリと首を傾げながら掻いた。
「やはり知っていたか。」