其の百十八 生徒会 第1席 特別措置者 吉田ミョウ

文字数 1,689文字

夕日がいつもの同じ位置に、スポットライトを当てた。

放課後を知らせる11月1日の16:00。生徒がリュックを背負って、部活へと家へと足を進める時間だ。

吉田は、いつものように沸騰した水を、真っ白なカップに注いで乱雑なブラックコーヒーを作った。

「かぁ!!やっぱりコーヒーを飲むオレって、カッコ良いよな~~」

「………。」

廊下に突っ立った彼は口を開かなかった。

「なんだ?

もう『吉田先輩~またかっこつけてんすか?』って言ってくれないのか?

それとも忘れたのか?4月に図書室で行ったこのやり取りを。」

「………。」

「そうか。あれ4月だったか。あの時は楽しかったな。

生徒会として、ハチミツ達と海岸そうじしたり、遠足ではアヤカに無理やり食わされたような気が……。」

「………。」

「そんな

な時期が1学期だった。今となっては、

生徒会長は死んで海に浮かんでるし、三尾アヤカは売春されて男に襲われているし、大浜ナオミは行方不明、堤ヨウはそこで昏睡状態、お前たちは牙を向いてくるし……

まともなのオレしかいないじゃあないか!」


ここで吉田はコーヒーを、一息で飲み干した。

滴る黒い液を、親指で拭き取る。


「あぁそうさ。8月のあのとき、お前が、引き金を引いたそのときに、俺たちの世界は地獄になった……」

やっと彼は口を開いた。唇の噛み痕からツーッと、血が伝う。

「俺は、俺は――!!楽しかったと思ってたよ……

中学から、レンや後輩と喧嘩して、血だらけになる日々で、それもそれで良かったとは思ってた。

……高校から、後輩と別れて隊を解散してから、一人で、、一人で、いることが多くなった。

カイやレンやカズミちゃんとは、幼なじみだった。だけど、どっか、、前のように、気楽に話せなかった。

普通に話せばいいだけなのに、何か、どっかが、みんな変わってて、、別人、、みたいに思っちまった。」


頭に漂う場面を、たゆたう音に形作りながら、スイは話を続ける


「だからよ、お前が、

のときに生徒会長を投げ飛ばしたときは、なんだかよ、、嬉しかったんだよ。

『あぁここにもバカはいるんだな』って。それがキッカケで、レンともまた話すようになったんだ。

レンやカズミちゃん以外にも、アヤカちゃんや、ヨウ先輩に、ナオミ先輩に、シン先輩、みんな今までに関わったこと無かった、

の人だったんだ。

大麻にも女にも、男にも、神にも溺れていない、血で汚れた俺には縁もなかった、普通の生徒の集まりだった……。

お前が、事件を起こすまではな……!!」



ここでスイは真っ黒な銃を、虚空の瞳を浮かべた青年に向けた。

青年は、図るように目を閉じる。


「貴様の言うように、生徒会は機能を失った。いまや私と、スイと、ハチミツ、の3人しかいない。

だが、そもそも今期の生徒会は、

のだから、なんの問題も無いでしょう?」


瞬間、スイは撃鉄を起こした。


「自責の念に駆られて、精神崩壊を起こす生徒。

親孝行するために行動しつづけて、居場所を失い、体だけを求められるようになった生徒。

なんのために生きているかと、背丈に合わない考えをずっっとしてる生徒。

楽器を弾くことだけが才能の生徒。まぁこいつからは、教えてもらったから悪くは言わんが。

付け加えて言うなら、早妃ほど、

はいなかったね。」



スイが引き金に指を置いたとき、同時に吉田も

をスイに向けた。


人間としての黒い瞳と、この世の業を煮詰めて綺麗に装飾された、朱い瞳が交差する。



窓から、こがらしが吹き込み、吉田の羽織っている学ランマントが、バッサバッさと荒れ狂う。



――さぁ、3年前、暴力団を虐殺したように、この私にも、その銃弾を打ち込むが良い。

そうだ。そうだ!!そうだ!!!あの日、早妃の両親を殺したのは、この吉田ミョウだ!!

貴様が行動を起こしやすいように、わざわざ顔を見せてやったのは、この吉田ミョウだ!!

貴様に【善人】の自覚があり、この私を【悪人】としているなら、その引き金を以て、証明してみよ!!

口先だけの偽善じゃないことを!!この私に――この俺に証明してみろッッ!!!



刹那、闇を穿つような光が、二つ走った。
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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