其の七十四 20区中央病院にて
文字数 1,297文字
『ごほッ、ああぁぁ――!』
『それで……、お前の力はそれぽっちなの?大窄カイ?』
少年は血を吐き出して
『まだに決まってんだろクソ女――!!!』
ブンブンっと音をならして拳と足を動かして、女学生に攻撃を仕掛ける。
しかし少年の攻撃は空を切るだけで、
『ギャン』
顔面に肘鉄をもらい、猫のような甲高い悲鳴を上げて吹っ飛ばされた。
『あっははは、楽しませてくれるわ。』
――――――
「私たちが小学生のときは、そんな幼稚なことしてたわね。」
ハチミツは思い出し笑いしながら、ベッドで横になっている『ユキ』に語っていた。
「……」
それをスイは、ただただ黙って見守っている。
「すごーい!!おにいちゃん達そんな昔から、たたかってたの!?」
ユキという女の子は、体を震わせながら、ベッドから身をのりだした。
「そう?今考えると恥ずかしいわ。小学生とはいえ、そんなバカなことばっかりしてたんですもの。」
「いいなー、わたしもたたかいごっこしたい!!だって、見てこの新聞!!」
そういって、ユキは古びた新聞紙のある記事を指さした。
【2018年:2月 五島新聞 カルト教団・麻薬組織 壊滅!!
35区の巨大カルト教団及び麻薬組織に、当時中学生の三名が殴り込んだとのこと。組織の人間の大半は逮捕されたが、そのほとんどは集中治療を受けなければならない程の重傷だったという――】
ハチとスイは目を合わせた。
ユキはその記事を恍惚とした目で眺めていた。
「3ねんまえってことは、ユキが5歳のとき、びっくりしたもん。
中学生がこんな組織を倒したって……、ユキもこんな強くなれたらいいのにって……。
話ながら少女は、真っ白な毛布に顔をふさぎ込んだ。
幼き少女が、本来背負う必要のない重荷を背負っている――その現実にハチは胸がつかえる気分に陥った。
「病気じゃなかったら、ユキは小学二年生……
ねぇハチちゃん、
学校でどういう所なの?
鬼ごっこってたのしいの?
おともだちとは、どんなあそびをしたらたのしいの?
……ふふ、やっぱりハチちゃん達のような、たたかいごっこがたのしいのかな。」
その心を穿つような生暖かい微笑みに、ハチは無力感がカビのように生える錯覚を覚えた。
コンコンと病室のドアがノックされ、スイがそれに対応した。
「こんなこといってはいけないけど、8月に起こった冷夏事件――ユキにとってうれしかったの………。
それがあったから、病院でおともだちができた。ハチちゃんとスイくんと――早妃ちゃん。
やっと、やっと話せる人ができたの。
ねぇハチちゃん、ずっとおともだちでいてね……。」
「もちろんよ……。」
ハチには、それしか言う言葉が見つからなかった。
ノックの対応をしたスイが戻ってきた。
「レ……、いやハチミツ、俺と泉は24区校に行く。お前はどうする?」
「文化祭だったわね。スイは約束したんでしょ?早く行ってきなさい。
私はユキちゃんと遊ぶわ。」
「そうか……、じゃあユキちゃん、また会いに来る。」
そういってスイは病室を出て行った。
「なにして、あそんでくれるの?」
ユキは、不安げな目線をハチミツに投げかけた。
「えっと……折り鶴でも折ってみない?」
『それで……、お前の力はそれぽっちなの?大窄カイ?』
少年は血を吐き出して
『まだに決まってんだろクソ女――!!!』
ブンブンっと音をならして拳と足を動かして、女学生に攻撃を仕掛ける。
しかし少年の攻撃は空を切るだけで、
『ギャン』
顔面に肘鉄をもらい、猫のような甲高い悲鳴を上げて吹っ飛ばされた。
『あっははは、楽しませてくれるわ。』
――――――
「私たちが小学生のときは、そんな幼稚なことしてたわね。」
ハチミツは思い出し笑いしながら、ベッドで横になっている『ユキ』に語っていた。
「……」
それをスイは、ただただ黙って見守っている。
「すごーい!!おにいちゃん達そんな昔から、たたかってたの!?」
ユキという女の子は、体を震わせながら、ベッドから身をのりだした。
「そう?今考えると恥ずかしいわ。小学生とはいえ、そんなバカなことばっかりしてたんですもの。」
「いいなー、わたしもたたかいごっこしたい!!だって、見てこの新聞!!」
そういって、ユキは古びた新聞紙のある記事を指さした。
【2018年:2月 五島新聞 カルト教団・麻薬組織 壊滅!!
35区の巨大カルト教団及び麻薬組織に、当時中学生の三名が殴り込んだとのこと。組織の人間の大半は逮捕されたが、そのほとんどは集中治療を受けなければならない程の重傷だったという――】
ハチとスイは目を合わせた。
ユキはその記事を恍惚とした目で眺めていた。
「3ねんまえってことは、ユキが5歳のとき、びっくりしたもん。
中学生がこんな組織を倒したって……、ユキもこんな強くなれたらいいのにって……。
心臓病
なんて、なんでなっちゃったんだろ……」話ながら少女は、真っ白な毛布に顔をふさぎ込んだ。
幼き少女が、本来背負う必要のない重荷を背負っている――その現実にハチは胸がつかえる気分に陥った。
「病気じゃなかったら、ユキは小学二年生……
ねぇハチちゃん、
学校でどういう所なの?
鬼ごっこってたのしいの?
おともだちとは、どんなあそびをしたらたのしいの?
……ふふ、やっぱりハチちゃん達のような、たたかいごっこがたのしいのかな。」
その心を穿つような生暖かい微笑みに、ハチは無力感がカビのように生える錯覚を覚えた。
コンコンと病室のドアがノックされ、スイがそれに対応した。
「こんなこといってはいけないけど、8月に起こった冷夏事件――ユキにとってうれしかったの………。
それがあったから、病院でおともだちができた。ハチちゃんとスイくんと――早妃ちゃん。
やっと、やっと話せる人ができたの。
ねぇハチちゃん、ずっとおともだちでいてね……。」
「もちろんよ……。」
ハチには、それしか言う言葉が見つからなかった。
ノックの対応をしたスイが戻ってきた。
「レ……、いやハチミツ、俺と泉は24区校に行く。お前はどうする?」
「文化祭だったわね。スイは約束したんでしょ?早く行ってきなさい。
私はユキちゃんと遊ぶわ。」
「そうか……、じゃあユキちゃん、また会いに来る。」
そういってスイは病室を出て行った。
「なにして、あそんでくれるの?」
ユキは、不安げな目線をハチミツに投げかけた。
「えっと……折り鶴でも折ってみない?」