其の百十五 メアリーとルシフェル

文字数 1,377文字

――敵は、あなた様の姉君である――【惑星(地球)】ではござりませんか!!??


その言葉が頭のなかで響いていた。


いつの間にか、あの畏怖すべき女王(シネスティア)もあの四神官もいなくなってて、仕方ないから、私は外へと足を運んだ。


ぼんやりと長い廊下を抜けると、胸の奥がジぃぃんと、痺れるような感触とともに、夕暮れにそまった浅界の空が、瞳のなかに入ってきた。


毎日見てたような懐かしい情緒に浸る

「よぉ。起きたか?

座れよ疲れてるんだろう?」

こちらに背を向けたままの男が、私に声を掛けた。

じっと夕日を見ているようだった。


「――ほぅ。男の横に座るとは、クソ度胸だな。

まぁなんだ、俺たちはたった二人の【救済の代行者】だ。

正直いえば駒扱いされるのはクソったたれだが、お互いに仲良くしようや。」


背広のコートを着た男は、隣に座った私に、顔を向けることは無く、ただただ夕日を見ていた。


「話し合い終わったの?」

「あ?やっぱり寝てたのか?――ったくお姫さんだな。

終わったよ。とにかく敵を倒す。いままでと変わらねぇ。」

「敵ってやっぱり、地球なの?」

最後に聞いた言葉を、投げかけた。

「……さぁな。知らなくていい事だろ。俺たちはもう死んでる人間なんだぜ?

本来なら世界の惨状なんて、気にせず『バラ色あの世生活』を送ってるだからよ。」

男はポケットから煙草を取り出して、口に咥えた。

煙が鼻をつく。

「わたしは、、8月くらいに、、代行者に任命されたんです。

光栄でした。自分が、自分が育った地球を守護する職につける、なんて考えてもみませんでしたから。」

大けがを負って、横になっていた時に思っていたことを、言葉にしていく。

「だって、人を助ける仕事に任命されたんですよ。

だけど、私、最初は、

。なんだか、都合が良すぎるって気がして。」

煙草から灰が崩れ落ちる

「あの、もしかして、あなたが神官たちを気に入ってないのも、『怒り』を感じているから、ですか?」

「『奴隷』だからさ。」

「え……?」

は奴隷だ。そこから怒りは感じている。

そうだろ?俺たちはいつだって振り回されてる。

それは、男だったり女だったり、金や権力、平和や公正、運命や神……そういうものに首輪をはめられているのが俺たちさ。

それは代行者でも神官でも、地球も月も同じことだ。」



「自由に……なりたいってことですか?」

「自由?やめてくれ。自由なんて欲しくも無い。」



女は、先の見えない話に、首をかしげながら思考する。

「どうしようもないだろ?『奴隷は嫌だ。自由も嫌だ。では、どうすればいいか』この難問がずっと解けないんだよ。

しかし、周りはそれを気にも止めず、理解もできないときた。

その答えが出るまでは、不満だろうと役立つ駒でいてやろうとしてんのさ。

それで人を殺してもな

お前は?」


突然振られて、体がビクっと動く。


「お前はなぜだ?」

「わ、わたしは人を助けるのが」

「違う。お前の怒りの原因はなんだ?」

風がふいて、枯れ葉が膝に着地した

「……分かりません。どうして怒っていたのか。
そういえば、どうして人を助けようとしてたんだっけ?

あれ?そもそもわたしって

?」

男は、女の苦悩する顔を見て、立ち上がった。

「疑問することをやめるな。そうすれば、小さな賢者には成れる。」

「また、よく分かんないことを……。」

男は女と、蒼い瞳を以て対面した。

小賢(こざか)しいってことだ。」
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登場人物紹介

吉田ミョウ/パーフィット (AL)


生徒会七人目の生徒


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